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旅ールのすすめ - ビールに会いに旅に出よう

山片 重嘉コウゴ アヤコ 1978年東京生まれ。杏林大学保健学部卒業。ビール好きが高じて2008年から1年半、ミュンヘンで暮らす。旅とビールを組み合わせた“旅ール(タビール)をライフワークに世界各国の醸造所や酒場を旅する。ビアジャーナリストとして『ビール王国』(ワイン王国)、『ビールの図鑑』(マイナビ)、『Coralway』(日本トランスオーシャン機内誌)など、さまざまなメディアで執筆。 www.jbja.jp/archives/author/kogo

春が来た! 酸っぱい塩ビールで乾杯しよう

ハルツ地方にある小さな街ゴスラー。10世紀から鉱石の採掘に伴って発展し、ゴスラーの旧市街地とその近郊にあるランメルスベルク鉱山は、ユネスコの世界文化遺産に登録されている。

毎年4月30日から5月1日にかけての夜、ハルツ山地の主峰ブロッケン山に魔女たちが集まり饗宴を催すという伝説がある。「ヴァルプルギスの夜」と呼ばれ、ゴスラーをはじめハルツ地方の街では魔女と悪魔に扮した人々が集まり、パレードやコンサートを楽しむ。もとは冬に別れを告げる、キリスト教以前からの民間のお祭りだ。

ゴスラーで10世紀ごろから造られていたとされているビールが「ゴーゼ」だ。原料は大麦麦芽と小麦麦芽、ホップ、コリアンダーなどの薬草。それらに塩を大量に加え、発酵には専用の酵母と乳酸菌の力を借りるというユニークなビールだ。多量に汗をかくゴスラーの鉱山労働者にとって、塩入りのゴーゼは疲労回復に適した飲み物だったことだろう。

19世紀の中頃には、ラベルにも描かれているようなフラスコ型のボトルに詰められ、栓はされずに販売されていた。発酵の過程で、酵母を含んだ泡がボトルネックに上昇して固まり、栓のような役目を果たしていたのだ。王冠で栓をして販売するようになった現在でも、醸造所での発酵は外気に触れる開放タンクで行われている。

ゴーゼは、東西ドイツ分断やビール純粋令などの歴史の中で一時衰退した。現在はザクセン州ライプツィヒに伝わるものがよく知られている。リッターゴーゼは、2015年から同州の街ケムニッツにある醸造所で造られている。

ゴーゼで乾杯する時は、細くて背の高いグラスに注ぎ、「Goseanna!」(ゴーゼアンナ)と言うのが伝統。程よい塩味がレモンのようにフルーティーな酸味と甘味を引き立たせる、爽やかな味わい。春の訪れを祝うのにぴったりのビールだ。

www.leipziger-gose.com

vol.52
Original Ritterguts Gose

Original Ritterguts Gose

 
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