チーズ料理に合わせたいアルプス産の濃色ビール
ヒルシュブロイは、ドイツ最南端の街ゾントホーフェンのビール。街があるアルゴイ地方は南バイエルンのアルプス麓に位置し、丘陵や湖、牧草地が牧歌的な景色をつくっている。古くから酪農が盛んで、アルプスの高地牧場で放牧された牛の無殺菌牛乳で造られるアルゴイヤー・ベルクケーゼや、ゼンアルプケーゼには、欧州連合(EU)の原産地呼称保護の表示が付けられている。ドイツのスーパーでも購入しやすいチーズだ。おいしいビールと共に、これらのチーズを味わってみてはいかがだろうか。
アルゴイ名産のチーズはそのまま食べるのもいいが、パンやじゃがいもの上に載せて焼いたり、シュペッツレ(南ドイツ郷土料理の太くて短いパスタ)に絡めて食べたりしても大変おいしい。もちろんビールとの相性も抜群。ヒルシュブロイの濃色ビールHolzar Bierに合わせてみよう。ロースト麦芽由来のナッツのような香ばしさが印象的で、余韻にホップのグラッシーな苦みが感じられる。同じくナッツのような風味を持つベルクケーゼとの好相性っぷりは言わずもがな。オーブン料理の少し焦げ目が付いたチーズは、互いのうまみを倍増させてくれる。
ヒルシュブロイはヘス醸造所によるブランド。長年ヘス家により運営されており、現在は同家出身のクラウディア・ヘス=シュトゥックラーと、その息子キリアン・シュトゥックラーが牽引する家族経営の醸造所だ。「伝統を体験し、新しいことを楽しむ」をモットーに、この地方の伝統的な飲み方を復活させたり、クラフトビールを造ったり、ペアリングセミナーを開いたりと、ビールを幅広く伝える役割も担っている。醸造所があるのはゾントホーフェンの中心部。隣接するレストランでは、新鮮なビールと共に、地元食材をふんだんに使った郷土料理が楽しめる。レストランには宿も併設。たっぷり飲んで食べて、そのままベッドに潜れるのは、旅ール好きの本懐だ。