150年を経た伝統と変革のシュナイダー醸造所
今から150年前の1872年(明治5年)、日本では初の鉄道が開業し、ドイツのミュンヘンではヴァイスビア(※)を専門とするシュナイダー醸造所が操業を開始した。創業者のゲオルク・シュナイダーは王立醸造所の元ビール職人。王家が独占していたヴァイスビアの醸造権が売りに出されるとそれを購入し、ミュンヘン中心部のタールに醸造所を設けた。代々オーナーはゲオルク・シュナイダーの名を受け継ぎ、現当主で6代目だ。
伝統的な製法を守り、ビールの一次発酵にはふたのない開放タンクを使用。醸造家は1日に数回、浮いてきた酵母やホップのかすを手作業で取り除く。若いビールは瓶か樽の中で最大3週間、発酵熟成させた後に出荷される。手間も時間もかかるこの行程は「Die BayerischeEdelreifung」(バイエルンの高貴な成熟)と呼ばれ、フルーティーかつスパイシーな風味やクリーミーな泡を生み出す。
伝統を大切にしつつも、現当主は消費者が求める新商品を次々に発表。商品ラインナップにTAP1~7の番号を振り、代々継承されたビールは商品名の頭にUnser(私たちの)を、6代目からの新商品にはMein(私の)という言葉を付けている。数量限定の特別なビールTAPXはマニア 垂涎の的だ。
醸造所は第二次世界大戦での被災を契機にドナウ川沿いのケルハイムに移転したが、ミュンヘンの醸造所跡には直営レストラン「Weißes Brauhaus」がある。ミュンヘンの伝統的な雰囲気のなかでおいしいビールと食事が楽しめることから、地元客や観光客で連日にぎわう。
創業当時からの味を引き継ぐ「TAP7」は、トロピカルフルーツやバナナを連想させる甘い香りとローストナッツのような香ばしさが特徴。複雑で奥行きがある。150年で変わったもの、変わらないものを想像しながら味わいたい。
※小麦麦芽を50%以上使用する上面発酵ビールで、南ドイツで造られるものは「ヴァイスビア」、それ以外の地域で造られるものは「ヴァイツェンビア」と呼ばれる
vol.71
Schneider Weisse TAP 7 Mein Original