おとぎの話の国バンベルクでドワーフ探し
バイエルン州の北東部に位置するオーバーフランケン地方の古都バンベルク。戦禍を免れた貴重な街並みや、小ヴェネツィア地区と呼ばれる川沿いに並ぶ家屋群の景観などが美しく、おとぎ話の舞台のような佇まいだ。旧市街はユネスコの世界遺産に登録されている。
バンベルクは古くからのビール醸造の街としても知られる。今回ご紹介するフェスラ醸造所もバンベルクを代表する醸造所だ。老舗レストランが軒を連ねるオーバーケーニヒ通りにあり、中央駅から徒歩5分ほどの近さ。道路を挟んだ向かいには、燻製香るラオホビールを造る スペツァル醸造所がある。はしご酒のスタートにはもってこいだ。
フェスラ醸造所の「Fässla」とは、フランケン地方の方言で「小さな樽」という意味。ラベルや看板には赤い帽子のドワーフが小樽を転がすイラストが描かれている。醸造所には酒場とホテルが併設されており、酒場は常連客や観光客で常ににぎやかだ。建物は1649年の創業以前から使用されていたとされ、黒く光る木のカウンターやすり減った石の床が、バンベルクの街と醸造所の長い物語を感じさせてくれる。この酒場では運が良ければ、店のマスコットであるドワーフを見ることができるらしい。ただしベロベロに酔っていることが条件なのだとか。
店一番の人気ビールは「Zwergla」だ。オーバーフランケン地方の伝統的なビアスタイルで、名前の由来はビール貯蔵タンクに付いた「Zwickelhahn」という蛇口。タンクからそのまま引かれてくるビールを意味し、ろ過される前なので酵母やにごりの原因となるたんぱく質などが残っていることが特徴である。麦芽のカラメルのような香ばしい風味とホップの苦みに奥行きを感じるが、後口はすっきり。濃い味付けの郷土料理との相性も良く、気が付けばグラスが空に。心地よい酔いに浸れば、テーブルの下からドワーフが顔を出してくれそうだ。