デュッセルドルフで伝統的わんこビールを召し上がれ
ドイツの西部、ライン河畔に位置するデュッセルドルフはノルトライン=ヴェストファーレン州の州都。ルール工業地帯の交通拠点として繁栄し、日系企業も多く進出している。近代的なオフィス街と歴史的な建物が並ぶ旧市街が調和する美しい街だ。
そんなデュッセルドルフのビールといえばアルト(Alt)だ。アルトは1838年にシューマッハー醸造所によって開発された。当時は冷蔵技術の発達と共に、南ドイツ発祥のラガービールが欧州全土に広がりつつあった時代。新しいラガー製法ではなく、あえて伝統的な製法で造ったことからドイツ語で「古い」を意味するアルトと呼ばれた。
アルトの醸造方法は少し特殊な「ハイブリット方式」だ。上面発酵酵母で20度ほどの高温で発酵させた後に、3度の低温下で4週間以上の時間をかけ熟成を行う。これにより、上面発酵の豊潤な香りと、低温熟成のキレの良さの双方の特徴をもつビールになるのだ。醸造所直営レストランでは、伝統的な注ぎ方でビールを提供してくれる。アルトのたるはそのままカウンターに運び込まれ、たるに直接蛇口を打ち付け重力のみでビールを注ぐ。発酵で生じた自然な炭酸だけなのでまろやかで口当たりがいい。グラスは200ミリリットルの円柱が定番だ。
シューマッハー醸造所と併設のレストランは中央駅から徒歩10分ほどの場所にある。席に着くとすぐさまウエーターがやってきて、グラスに注がれたアルトを目の前に置いてくれる。「Schumacher Alt」はローストした麦芽の香ばしい香りとホップの清々しい苦味。刺激は少なくスルスルと喉を滑り落ちていく。飲み込んだ後も心地よい余韻が残り、次の一口を誘う。グラスが空になるとすぐさま新しいアルトが運ばれる。わんこ蕎麦のように次々とおいしいアルトがやって来るのは、話のタネとしても面白い。