ジャパンダイジェスト

UMAMIの世界 3 ー 西洋のUMAMI

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西洋において、古来、味覚の大事な要素と考えられているのが脂肪分です。脂肪分はそれ自体が味わいを持ち、ほかの味わいを支えます。肉類の味わいは、筋肉組織を包む脂肪分を通して増強されます。バターや様々なオイルも、料理の味わいをより豊かにします。

脂肪分とともに重要な味わいの要素となるのが、フランスのフォン(fond)やブイヨン(bouillon)、ドイツのブリューエ(Brühe)など、肉類(主に骨とすじ肉) あるいは魚介類と香味野菜を長時間煮込んで得られるスープ、いわば西洋版の「だし」です。

これらのスープ類に牛乳や生クリーム、サワークリーム、ヨーグルト、チーズ、トマト、ハーブ、スパイス類などを加えて、味わいを濃厚にすることもあります。フォン・ド・ボーのように、素材となる骨やすじ肉を一度焼いてから煮て、濃厚さを出す場合もあります。

スープの味わいをさらに奥行きのあるものにするために、果汁や蜂蜜、バター、オリーブオイル、ワイン、ビールなどを加えることもあります。それは和食の煮物などに、みりん、ごま油、日本酒などを加え、味に深みを出す感覚と似ています。

近年、西洋でうま味の概念が知られるようになり、どの食材にうま味が多く含まれているかが認識され始めました。西洋のうま味といえば、まず肉類。上述のスープ類にはうま味が凝縮されています。生ハムやベーコンなどの薫製食品、塩漬けの豚なども、うま味の宝庫です。牛肉、豚肉、鶏肉に共通して多いのはイノシン酸。肉類のうま味は、一緒に食べるじゃがいもやパン、パスタなどの味わいを豊かにしてくれます。

次に重要なうま味を持つ食品は、発酵乳製品です。特にチーズにはうま味が多く、グルタミン酸が豊富に含まれています。牛乳から作られるチーズのほうが、羊や山羊の乳から作られるチーズよりもグルタミン酸含有量が多いそうです。イタリア料理では、パルミジャーノチーズをパスタやスープなど、あらゆる料理の上に削って振り掛け、うま味を加味します。ギリシャやトルコ、バルカン地域では、料理にサワークリームやヨーグルトなどを加えます。

また、西洋においても魚介のうま味が活用されており、スープ類以外に、乾燥させた魚介や塩漬けにした魚介が使われています。古代ローマにはガルムという、イワシやマグロなどの内臓を細かく刻み、塩水に漬けて発酵させた魚醤に似た調味料があり、あらゆる料理に使われていましたが、現在は姿を消し、代わりにアンチョビが調味料のように使われています。

トマト由来のうま味も、重要なものです。南米原産のトマトが欧州大陸で栽培されるようになったのは16 世紀以降ですが、今や西洋の食卓に欠かせない食材となりました。トマトはグルタミン酸含有量がチーズ並みに多く、生で使うほか、トマトピューレやドライトマトも利用されています。インドネシアの黒大豆醤油(Kecap)をヒントに英国で生まれたといわれるケチャップにも、トマトが使われています。

グアニル酸が豊富なきのこも、うま味のもととして活用されており、グルタミン酸が最も豊富なきのこは椎茸で、ドイツでも栽培されています。このほか、西洋のナチュラルなうま味のもとに、英国と英語圏で使われている酵母や麦芽のエキスがあります。うま味たっぷりのウスターソースも、英国生まれです。

 
Weingut Weigand
ヴァイガント醸造所(フランケン地方)

アンドレアス・ヴァイガント
ジルヴァーナーの可能性に挑戦する
アンドレアス・ヴァイガント

1990年にヴェルナー&ペトラ・ヴァイガント夫妻が興した醸造所。2013年からは、息子のアンディことアンドレアス(24)がワイン造りに取り組んでいる。アンディは、地元のブリューゲル醸造所ほかで修業。現在はバーデン地方のツィアアイゼン醸造所での研修と、ガイゼンハイム大学での学業、実家でのワイン造りを掛け持ち中。自らの直感を大切に、テイスティング能力を磨きつつ、高品質のワイン造りに取り組んでいる。所有畑は約6ヘクタール、栽培品種はジルヴァーナーが50%を占める。ジルヴァーナーにはまだまだポテンシャルがあると語るアンディ。将来的にはジルヴァーナーの畑をさらに増やし、すべてのジルヴァーナーを木樽で醸造したいと言う。

Weingut Weigand
Lange Gasse 29
97346 Iphofen
Tel. 09323-3805
www.weingut-weigand.de


2014年 リースリング ゾンネンベルク 辛口2014 Silvaner「Der Franke」
Julius Echter Berg trocken
2014年 ジルヴァーナー「デア・フランケ」
ユリウス・エヒター・ベルク 辛口 14€

ヴァイガント醸造所のコレクションは、「Der Held」「Der Franke」「Der Wilde」の3段階。いずれも主役はジルヴァーナーだ。「Der Held」は、選りすぐりの古木のジルヴァーナーを木樽で自然発酵させたもの。「Der Franke」は、イプホーフェンの2つの畑の古木のジルヴァーナーを畑別に醸したもの。ご紹介するユリウス・エヒター・ベルクのジルヴァーナーは樹齢40年。畑は三畳紀のコイパー土壌。ハーブ系の風味と爽やかな苦み、クリーミーなテクスチャー。ジルヴァーナーの可能性を探るアンディの渾身作だ。


 
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岩本順子(いわもとじゅんこ) 翻訳者、ライター。ハンブルク在住。ドイツとブラジルを往復しながら、主に両国の食生活、ワイン造り、生活習慣などを取材中。著書に「おいしいワインが出来た!」(講談社文庫)、「ドイツワイン、偉大なる造り手たちの肖像」(新宿書房)他。www.junkoiwamoto.com
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