ベルリン・テンペルホーフ空港。空港コードはTHF。自分で利用することは一度もなかったけれど、日本から来た友人を迎えに初めてこの空港のがらんとした本館に入ったときの強い印象や、2008年10月末にここから飛ぶ最後の飛行機の離陸を見届けた瞬間など、私自身のベルリンの思い出と結び付いている場所である。

テンペルホーフ空港はそのまま建物を残し、現在は公園となっている。この10月6日から10日まで、空港の開港100年を記念して、「100 Jahre −100 Stunden」が開催された。100周年を100時間かけて祝う趣旨のフェスティバルだ。日曜の午後に家族で足を運ぶと、本館の前には人々の長大な行列ができていた。一瞬帰ろうかともひるんだが、結局1時間近く並んで建物の中に入った。

100周年フェストが開催された旧テンペルホーフ空港の本館

1936年から41年にかけて建てられた空港本館は、往時のにぎわいをほうふつとさせる活気だ。演出されたものとはいえ、チェックインカウンターにはスタッフが座り、荷物のレーンにはトランクが並ぶ。周りを見渡すと、あちこちでガイドツアーやアートの展示、朗読会などが行われていた。

かつての搭乗ゲートを抜けて、階段を下ると、目の前には往年の飛行機が停まっていた。このタラップを上れば、そのまま搭乗できたわけだ。現代の巨大な空港を見慣れている目からすると、なんとシンプルな造りだったかと思う。公園に生まれ変わった滑走路の向こうには地平線がかすんで見えた。

本館の2階はかつてのレストランで、ここからの滑走路の眺めも楽しい。私たちはすでに十分満喫したのだが、「THF Tower」という新しいスポットに足を伸ばしてみることにした。

航空管制塔を改築したというこのタワーは、扇状の空港本館の南端に位置する。長さ1.2キロにもおよぶ欧州最大級ともいわれる建造物ゆえ、端にたどり着くまでがかなりの道のりだ。再び長い行列に並び、エレベーターで6階へ。そこから階段で屋上テラスへ上がった。ここからの眺めの良さはどうだろう。長大な空港本館やその向こうの市内中心部が一望のもとに見渡せ、滑走路を利用した公園で日曜日を過ごす人々が豆粒のように点在している。

THFタワーの屋上テラスにて

6階に下りていくとき、階段を見てはっと気付く。古くからの階段と交差する形で新しい階段が設置されており、ふわっと浮いているような感覚を味わった。6階の展示会場では、1923年10月8日にここから最初の飛行機が飛び立ってから、戦後のベルリン空輸作戦を経て閉港を迎えるまでの歴史を駆け巡ることができる。

この空港から飛ぶ機会はついぞなかったけれど、過去の回顧と現実の風景とが重なり合い、ベルリンの天空を飛んでいるような気分になった。ベルリンを訪れたお客さんを連れていずれまたこのタワーに来ようと思う。そして、現在は建物の一部が難民の滞在施設としても使われているこの巨大な空港跡の行方にも思いをはせた。

旧テンペルホーフ空港
Flughafen Tempelhof

1923～2008年まで使われていたかつての空港跡。モニュメンタルな建築物がそのままの状態で保存され、起伏に富んだ歴史を紹介するガイドツアーが提供されている。U6のPlatz der Luftbrücke駅を上がると、ビジターセンター「CHECK-IN」があり、以下はその情報。

オープン：水〜月10:00〜17:00
住所：Platz der Luftbrücke 5, C2 12101 Berlin
電話番号：030-2000374500
URL：www.thf-berlin.de

THFタワー
THF Tower

テンペルホーフ空港のかつての航空管制塔を再活用して、2023年7月にオープンした展望台。高さ30メートルの屋上テラスからの眺望が望める。6階ではこの10月から空港100年の歴史を紹介する新しい常設展示が始まった。入場料は大人6ユーロ、割引3ユーロ（18歳までは無料）。

オープン：水〜日11:00〜18:00
住所：Tempelhofer Damm 45, 12101 Berlin
電話番号：030-2000374500
www.thf-berlin.de/ihr-besuch/thf-tower#