日曜の午前は、息子を連れて時々乗り物の「旅」に出かける。私は月額49ユーロでドイツ全土の列車に乗れるドイチュラントチケット、息子はベルリンABゾーンの子ども用定期券を持っている。ベルリンの生活も物価高が響いているが、自由に移動できる公共交通チケットの存在はありがたい。
5月のある日曜、天気が良かったので、ツォー駅からシュトラウスベルク方面行きのSバーン(S5)に乗った。ベルリン北東のシュトラウスベルクはブランデンブルク州に属し、Cゾーンチケットが必要になるので、息子には接続チケットを買う。
シュトラウスベルクのシュトラウス湖のほとりにて
ベルリンに20年以上住みながら、シュトラウスベルクには一度も行ったことがなかった。マールスドルフを過ぎた辺りから、窓の外に緑が広がり、爽やかな気分になってくる。1時間10分ほど電車に揺られて、終点のシュトラウスベルク・ノルト(北)に着いたが、ここにめぼしい見どころはない。地図を見て、細長い湖に面した一つ手前のシュトラウスベルク・シュタット駅に戻ることにした。
駅から人通りの少ない通りをしばらく歩くと、旧市街の中心のグローセ通りに入った。三角屋根の木組みの家が残るすてきな街並みだ。お腹を空かせた息子と「トルテンドゥフト」という名のカフェに入った。中世の時代、ビール醸造所として建てられた石造りの建物を改造した今風のお店で、おいしいキッシュを食べた。
13世紀、シュトラウス湖に面してキーツと呼ばれる漁村がつくられたのが、シュトラウスベルクの起源だという。グローセ通りを先に歩くと、1254年に建設が始まった市壁の跡が保存されていた。
やがてシュトラウス湖のほとりに出た。最終氷期に生まれた湖で、透明度が高い。近くには子どもの遊び場もある。湖にせり出た展望台から開放的な眺めを楽しんでいると、湖を横切って架線が張られているのに気付いた。欧州で唯一という、架線で集電するケーブルフェリーが走っているのだそうだ。現在は運休中だったが、また乗りに来ようと思う。
アイスを食べてから、旧市街の要に位置するルストガルテンという広場に行った。観光案内所があり、日曜でも開いているのがうれしい。その前に路面電車の停留所があり、黄色いトラムが向こうからやって来た。ベルリン市内で見かけるのと同じタイプの電車だが、案内所でもらったパンフレットによると、1893年創業のシュトラウスベルク鉄道が運営する歴史的な路線だという。
古い建物が多く残る旧市街のグローセ通り
帰る方向でもあるので、この89番トラムに乗ってみた。車道に沿って南下した後、やがて森の中に入り、車窓が緑一色になる。途中、Märchenwald(メルヘンの森)という名の停留所もあり、息子とメルヘンの世界に迷い込んだような楽しさを味わった。
15分弱で終点シュトラウスベルク駅に着くと、再びS5でベルリン市内に戻れる。当初は終点まで往復するだけの予定だったが、湖に誘われて寄り道したおかげで、発掘の散歩にふさわしい日曜となった。
シュトラウスベルク
Sakura-Campaign
ブランデンブルク州にある人口約2万7000人の町。森と湖が豊富で、ハイキングやサイクリングのほか、さまざまなスポーツを楽しめるなど週末の行楽地として人気が高い。ベルリン市内から20分ごとにS バーンのS5が出ている(ABCゾーンの1回券4.4ユーロが必要)。下記はシュトラウスベルク観光案内所の情報。
ツーリストインフォメーション:
(5~9月)火~金10:00~16:00、土日10:00~15:00
住所:August-Bebel-Str. 1, 15344 Strausberg
電話番号:03341-311066
URL:www.strausberg.de
カフェ&コンディトライ・トルテンドゥフト
Tortenduft Café & Konditorei
シュトラウスベルク旧市街にある「トルテの香り」という名のカフェ。朝食メニューに加え、色とりどりのケーキやトルテを楽しめる。カフェが入っているAlter Brauhofという建物は、中世のビール醸造所の貴重な生き残り。三十年戦争で損傷を受けたが、17世紀末以降は上流階級の住居として使われてきたという。
オープン:水~日9:00~17:00
住所:Große Str. 18, 15344 Strausberg
電話番号:03341-2149186
URL:www.tortenduft.de