ジャパンダイジェスト

蘇るポツダム、バルベリーニ美術館を楽しむ

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ベルリンからレギオナルバーンに乗ると、わずか25分でポツダム中央駅に着く。プロイセンの歴史を振り返ると、ベルリンとポツダムは双子のような関係で歩んできたにも関わらず、街の規模も雰囲気も両者はまったくといって良いほど異なる。こぢんまりとした旧市街のスケールに加えて、その景観の美しさ。少し外に出ると、手入れの行き届いた庭園がたくさんある。私はポツダムで過ごす半日が大好きだ。

そのポツダムがこの数年で著しく変化している。中央駅からトラムに乗ってハーフェル川に架かる橋からアルター・マルクト広場への眺めは、訪れる度に変化しているとさえ思える。第二次世界大戦の空爆で破壊されたプロイセンの王宮が2014年に再建されると、ブランデンブルク州議会がここに移った。そして昨年1月、国際的にも注目を集めたのが、この広場にオープンしたバルベリーニ美術館だろう。

ポツダムの中心部に誕生したバルベリーニ美術館
ポツダムの中心部に誕生したバルベリーニ美術館

一個人のイニシアチブによって出来上がった美術館である。ITのパイオニアにしてアートコレクターのハッソ・プラットナー(1944〜)が、やはり大戦で破壊されたバルベリーニ宮殿をここに再建し、美術館としてオープンさせたのである(彼はポツダムの王宮の再建でも2000万ユーロもの募金をした)。第1回の展覧会は連日長蛇の列ができていたことが報道され、なかなか足が向かなかったが、あれから1年以上経ってようやく訪れる機会が巡ってきた。

もともと18世紀にフリードリヒ大王の命で建てられたバルベリーニ宮殿。この日は、ドイツの風景画家クラウス・フースマン(1938〜)の作品と、マックス・ベックマン(1884〜1950)の大規模な展覧会が行われていた。ライプツィヒに生まれ、劇場やサーカス、ヴァリエテを主題とする作品をたくさん描いたベックマンの展覧会のタイトルは、「世界劇場」。後にナチスによって「退廃芸術」の烙印を押されてしまった彼の作品には、あらゆる人間の営みを演劇の枠に封じ込めたような過剰なエネルギーが充溢している。混迷を極めるいまの世界情勢を明確に意識して企画された展覧会のようで、元連邦議会議長やフェスティバルディレクターの講演会など、さまざまな関連プログラムも用意されていた。

美術館からアルター・マルクト広場を臨む
美術館からアルター・マルクト広場を臨む

これだけでも十分見応えがあったが、3階に上がると、見覚えのある建物の内装の写真が目に迫ってきた。2006年までベルリンに実在した共和国宮殿。東ドイツの人民議会だったこの建物に展示されていた16枚の大判の作品が、初めて再公開されたという。近現代の作品に加えて、東独時代の芸術、そして1989年以降の国際的な作品のコレクションに力を入れているのが、バルベリーニ美術館の特色だ。

美術館の窓からは、解体を間近に控えた東独時代の遺構(この広場では最後となる)が見えた。いよいよ東独時代が遠くなったと感じた一方、18世紀から20世紀初頭までのプロイセン時代の文化遺産の宝庫であるポツダムに、それまで抜け落ちていた近過去の芸術作品との出会いの場が生まれたのは嬉しい。

インフォメーション

バルベリーニ美術館
Museum Barberini

昨年1月にオープン。2018年はベックマン展のほか、ゲルハルト・リヒター、アンリ=エドモン・クロスの大規模な展覧会が予定されている。入場料は14ユーロ(割引10ユーロ/ 18歳以下は無料)。プロイセン王立財団が運営する宮殿と公園群のチケットを提示すれば、25%割引される。

オープン:月曜、水曜〜日曜10:00〜19:00、
毎月第1木曜10:00〜21:00
住所:Alter Markt, Humboldtstr. 5-6, 14467 Potsdam
電話番号:0331-236014499
URL:www.museum-barberini.com


絵画ギャラリー
Bildergalerie

1764年頃、フリードリヒ大王の命によってサンスーシ宮殿の隣に建てられた絵画ギャラリー。カラヴァッジョ、ヴァン・ダイク、ルーベンスを始めとする16〜18世紀の140点以上のコレクションが収められている。ドイツに現存する最古のギャラリー建築で味わう絵画鑑賞は、ポツダム滞在の忘れられない時間となるはずだ。

オープン:火曜〜日曜10:00〜17:30(5月〜10月のみ)
住所:Im Park Sanssouci 4, 14469 Potsdam
電話番号:0331-9694200
URL:www.spsg.de

 
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中村さん中村真人(なかむらまさと) 神奈川県横須賀市出身。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。現在はフリーのライター。著書に『ベルリンガイドブック』(学研プラス)など。
ブログ「ベルリン中央駅」 http://berlinhbf.com
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