今号より、隔月でベルリンの地域レポーターを担当させていただくことになりました、守屋亜衣と申します。どうぞよろしくお願いいたします!
コロナに関する規制がほとんどない状態でクリスマスシーズンを迎えたこの冬。ベルリンではおよそ90もの大小さまざまなクリスマスマーケットが開催されており、多くの人々がグリューワインを片手に歓談する平和なムードが戻ってきました。なかでも今年の注目は、美しいロケーションで知られるシャルロッテンブルク宮殿庭園のマーケットでしょう。
宮殿建物を彩るプロジェクションマッピングも、マーケットの見どころの一つ
2007年の初回開催から、会場の装飾にはリサイクル可能な天然素材をふんだんに使用。使い捨てプラスチックを避けて廃棄物を抑える努力をし、至る所にスロープを設置してバリアフリーを徹底。会場に流れるのは録音された音楽ではなく、ブラスバンドが毎日クリスマスキャロルを生演奏するなど、高い美意識でオーガナイズされ、地域の人々に愛されてきました。しかしここ2年間はコロナ禍のため開催ができず、実に3年ぶりのマーケット。その上、庭園のレンタル契約が更新されずに今年末で期限切れとなる予定で、今回が最後の開催になってしまうかもしれないのです。
オープン翌日に訪問した際、ひときわ目を引いた取り組みがありました。ベルリンのウクライナ支援団体(UKRAINE-HILFE BERLIN e.V.)による写真展と工芸品ショップです。このマーケットの主催者は、2009年以来ウクライナのパートナーと協働でイベント開催を通じた募金活動など国際平和プロジェクトを続けてきた実績があり、その結びつきの強さが感じられました。友人たちを助けたいという純粋な祈りに満ちた空間。ロシアによるミサイル攻撃や街の占領による生々しい爪痕が焼き付けられた写真を、ロマンチックなクリスマスマーケットの中で見るという体験は、残酷な現実をより浮き彫りにするかのようです。この場所にふさわしくないと反発する声もあるかもしれませんが、私にとっては、平和への祈りをより強くさせてくれる大切な経験となりました。
ウクライナの工芸品の売上は支援団体へ寄付されます
エネルギー問題に揺れる昨今、クリスマスマーケットについてもさまざまな議論があるなかで、照明を減らしたりLEDに置き換えたりと工夫しながら、市井の人々のために作り上げられた憩いの場所。伝統的なクリスマス料理をはじめ、手工芸品やお菓子なども丁寧に作られており、商業主義の強いマーケットとは一線を画すものがあります。たくさんの見どころは、とてもここには書ききれません。
インターネット上では来年以降の存続を訴える署名活動も展開しているとのことですが、まずは今年のマーケットが成功しますように。12月26日(月)まで開催しているので、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。