エルベ川沿いのブラセヴィッツ地区は、その外観から通称コーヒーミルと呼ばれる戦前の邸宅が立ち並ぶ、緑の多い閑静な地域です。文化財指定を受けている旧カール・ベルグマン邸もその一つで、現在はザクセン州建築家協会(Die Architektenkammer Sachsen)の本拠地となっています。ここで1月12日から2月1日まで「第一回 建築の対話 ライプツィヒ」(Architektur Dialoge Leipzig#1)が開催されました。
Haus Der Architekten(ザクセン州建築家協会の本拠地)の外観
ライプツィヒの「日本の家」(Das Japanische Haus e.V.)で2015年5月に展示された後に、ドレスデンでの展示が実現したものです。日本とドイツの次世代を担う若手建築家をペアで紹介し、日本からは河内建築設計事務所、ドイツからはイルレンブッシュ・フォン・ハンテルマン事務所が取り上げられました。
展示はこの二つの事務所に同じ問いを投げかけた「対話」で始まり、一つの問いに対して各事務所の写真が1枚ずつペアで多数展示されています。例えば、それぞれの事務所が設計した建築のファサード(建物の正面)の写真の比較というように、対になりえる写真で構成されています。一見すると両者の背景を考慮しない切り口での比較が、実は観る側にその背景や相違を気付かせるような見せ方であることを、じわっと感じさせる手法であることに気づきます。
「日本の家」の共同主催者の一人は、日本人女性のミンクス典子さんで、偶然にも「私の街のレポーター」のライプツィヒ担当ライターです。日本大学および東京理科大学で建築を学んだ後、ウィーンやデュッセルドルフ、ロンドンおよび東京の建築事務所に勤務し、その後独立して2010年からライプツィヒを拠点としています。
ライプツィヒには残念ながら建築関係のイベントや展示が少ないため、それならば自分で立ち上げてしまおう、というのが本展のきっかけだったとか。しかし、最初は手探り状態。試行錯誤の連続でしたが、日本とドイツの建築事務所が積極的に協力してくれたことで前進し、そのことが何よりも大きな成果と振り返ります。対比させたら面白いのではないか、と思っていたことが思うように発展しなかったり、逆に建築事務所の業務内容における日独の差異、といった思いもよらなかったことが双方の関心を呼んで対話が広がったりしたこともあり、展覧会までのプロセスそのものが、参加した建築事務所および典子さんにとっての最大の醍醐味だったようです。
オープニングパーティーの会場の様子
すでに第二回の展覧会の企画が始まっており、6月にはライプツィヒの「日本の家」で開催し、来年には再びドレスデンのこの場所で展示されるとのこと。小さなお子さん二人を持つパワフルなママである典子さんの今後のキュレートが楽しみです。詳しくは「日本の家」のウェブサイトをご覧ください。
「日本の家」のHP
http://djh-leipzig.de/ja
横浜出身。2005年からドレスデン在住。ドイツ人建築家の夫と娘と4人暮らしの建築ジャーナリスト。好奇心が向くままブログ「monster studio」公開中。
http://yoyodiary.blog.shinobi.jp/