ジャパンダイジェスト

オペラ歌手・車田和寿さんにインタビュー

すでに何度かご紹介しているラーデボイルは、ドレスデンからトラムで西に15分ほどの距離にある町です。この町にあるザクセン国立劇場(Landesbühnen Sachsen)の専属オペラ歌手として2012年9月より活躍しているバリトン歌手が、今回ご紹介する福島県出身の車田和寿さんです。 

車田和寿さん
稽古場での車田さん(撮影:車田祐紀)

中学校で吹奏楽を経験し、高校に入るや否や将来は音楽大学に進学、専攻はトランペット、あるいは声楽と決意したそうです。東京の国立音楽大学声楽科を卒業し、高校の音楽科教諭として4年間勤務した後、師事したい先生がドイツ在住という理由で渡独。シュトゥットガルト、ブレーメン、そしてラーデボイルへと歌手としての活動拠点を移し、居住地も転々としました。

今回は、その車田さんにお会いするためにラーデボイルへ向かい、オペラ歌手の知られざる裏側について伺いました。オペラと聞くと総合芸術や芸術の最高峰という文字がチラシに踊っているのを見かけますが、華々しく見えるオペラ歌手の仕事は実はかなりタフなようです。

まず、役作りで一番大切なことは楽譜をきちんと読み、テキストを正しく理解すること。最初に演出家が演目のコンセプトを説明、それを基に役作りをし、リハーサル期間は6~8週間を要します。同じ役でも劇場によって演出が異なるため、様々な演技が要求されるので、演じる歌手にはどんなことにも柔軟に対応する力が求められます。当日の朝に突然電話が入り、その日の夜の公演の代役を頼まれることも。そのようなときは、直前にVTRを見て演じ方を学び、舞台に立つこともあるのだそうです。演じる役は主要なものから短時間の役までいろいろですが、1シーズンで計14役を受け持ち、5日連続で違う役をこなしたこともあるのだとか。

ハルレキン役
「ナクソス島のアリアドネ」ハルレキン役(撮影:ハーゲン・ケーニヒ)

日頃のリハーサルでも演出によっては床に這いつくばることもあり、ジャージ姿で臨むことも。「何よりも心身ともにタフであることと、柔軟性や対応の良さが求められます」と車田さん。しかし、役を通じていろいろな自分になれることは面白いとのこと。現代的な演出や現代オペラはとっつきにくいと感じている観客も多いようですが、ヨーロッパ系以外の歌手にとっては、見た目に左右されない現代オペラは、むしろ有利なのだそうです。

2016年夏にはザクセンスイス国立公園野外劇場で「魔笛」のパパゲーノ役、「魔弾の射手」のオットカー役、そしてコンサートでのバリトンソロが控えています。今後の活躍に注目です。

●車田和寿さんの公式ブログおよびFacebook
http://kazuhisakurumada.blog46.fc2.com
www.facebook.com/bariton.kazuhisa

●ザクセンスイス国立公園野外劇場の公式ホームページ
www.landesbuehnen-sachsen.de/felsenbuehne-rathen

福田陽子さん福田陽子
横浜出身。2005年からドレスデン在住。ドイツ人建築家の夫と娘と4人暮らしの建築ジャーナリスト。好奇心が向くままブログ「monster studio」公開中。
http://yoyodiary.blog.shinobi.jp/
 
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