日本で春の象徴といえば「桜」。ドイツにも桜の名所はいくつかありますが、私の住むノルトライン=ヴェストファーレン州で最も有名な場所といえば、ボンの桜並木でしょう。例年4月中旬に美しい八重桜が見頃になります。もともとは都市開発の一環として、1980年代に日本産の桜の木300本ほどが旧市街に埋められたのが始まりだそう。その後、2012年にフェイスブックページ「Places to See Before You Die」(死ぬ前に一度は行きたい場所)に投稿されて話題になり、今では世界の美しい並木通りの一つとして知られています。毎年春になると、ドイツ国内をはじめ周辺国からも多くの観光客が桜を見に集まるようになりました。
ヘーア通りの桜並木。八重桜のトンネルは必見!
私の住むデュッセルドルフからボンまでは車でも電車でも1時間弱。桜並木のある二つの通り、ヘーア通り(Heerstraße)とブライテ通り(Breite Straße)を目指して向かいましょう。この時期の週末には、広場で芸術家によるハンドメイドマーケットが開かれていてさまざまな絵や作品が並んでいたり、音楽を演奏する人がいたり。通り沿いには、Sakura Ale(さくらビール)と書かれた看板も。カフェやレストランには、桜をテーマにしたドリンクやスイーツの特別メニューがあり、テラス席は一杯飲みながら桜を楽しんでいる人でにぎわっていました。
ミュンスター広場にあるベートーヴェン像
かつて西ドイツの首都だったボン。見どころは桜だけではありません。人口は30万人ほどですが、街の中心にあるミュンスター広場の周辺には11世紀に建てられたミュンスター教会、南側にはかつてケルン選帝侯の宮殿だったポッペルスドルフ城(現在はボン大学の本館)などもあり、歴史ある街です。ドイツを代表する偉大な音楽家、ベートーヴェンもこの街で生まれ、ウィーンに活動拠点を移す22歳まで暮らしていました。現在、彼の生家はBeethoven-Hausとして公開され、内部を見学することができ、ベートーヴェン直筆の楽譜や実際に使用していた楽器、補聴器などが展示されています。毎年秋にベートーヴェン音楽祭が開催され、ボンには世界中からファンが集まるそうです。
ベートーヴェンの生家。現在は博物館として見学可
昨年、私がボンを訪れたのは4月の中旬でしたが、桜の見頃は年によって変動するので、最新情報をチェックしてくださいね。また、桜のピーク時期は混雑緩和のため、通行止めエリアも設定されています。車の場合は旧市街の外に駐車して、歩いて向かうことをおすすめします。
日本から遠く離れたドイツで歴史ある街並みと調和し、美しく咲き誇る桜はとても見応えのあるものでした。娘の手を引きながら満開の桜のトンネルの下をお散歩していると、ドイツ語の「Frühlingsgefühle」という単語を思い出しました。長かった冬が終わり暖かくなってワクワクする気持ち、春の高揚感を表すすてきな言葉です。いよいよ待ちに待った春! お花見に出かけて美しい季節を楽しみましょう。
出版社勤務ののち、夫の駐在に伴い2019年7月に渡独。現在は、デュッセルドルフ生まれの3歳と0歳の娘の子育てに奮闘中。趣味はライン川での散歩と、パンやお菓子を焼くこと。