1月25日にフランクフルトのイベント会場Brotfabrikで、日本のアートロックバンド「KAO=S」の単独公演が開かれました。ドイツでの単独ライブは今回初ですが、7年前の日本映画祭にはじまり、昨年一昨年のマイン祭など、フランクフルトの日本関連イベントには何度も出演しているKAO=S。その縁と実績、地元のサポートとBrotfabrikの協力で、今回の単独公演が実現しました。KAO=Sは、力強い歌声と華麗な剣舞が魅力の川渕かおりさんと、ギタリスト・シンガーで作詞作曲も手がける山切修二さんの2人組ユニット。今回はそこに、ロックな三味線を体現する神井大治(かみい ひろはる)さん、民族楽器を操るパーカッションの齊藤慧(さいとう さとし)さんという強力なサポートを迎えた4人での公演です。
左から齊藤慧さん、山切修二さん、川渕かおりさん、神井大治さん
当日は、マイン祭でKAO=Sを知った地元ファンなど多くの人々が駆けつけ、チケットは完売の大盛況。メンバーが登場すると、満員の会場が大きな歓声に包まれました。真っ赤な衣装の川渕さんが真っ白な鞘から剣を抜き、鈴の音の中で剣舞が始まると、一同息を飲んで舞台を見つめます。気合の入った掛け声と鮮やかな剣さばき。そこにギター、三味線、鈴やカホンが絶妙なバランスで混ざり合い、パワフルな歌声が響き渡ります。川渕さんと山切さんの2人での歌唱部分も素晴らしく、1曲目から観客の心を鷲掴みにしてしまいました。
迫力の剣舞に静まり返る場内
「世界の朝」という曲では、観客もサビを練習して一緒に歌いました。会場中の一体感、その時その場でしか作れない音楽を通した共有体験はライブの醍醐味です。MC中は、先ほどの気迫が嘘のようにチャーミングな川渕さん。片言のドイツ語で会場中を笑いに包むユーモア溢れる一面もありました。
心を揺さぶる強靭な声、剣や扇を使った圧倒的パフォーマンス、包み込むような心地よいギターや激しく掻き鳴らされる三味線の音色、民族楽器の巧みなリズムさばき……。各メンバーの才能が相乗効果をもたらし、濃厚で鮮烈なステージが続きます。般若の面を使った曲「桜の鬼」では、舞台が一気に幻想的で幽玄な世界に。静動、喜哀といった相反する事象が音と動きで絶妙に表現され、見るものに壮大な物語を想起させました。ほかにも、荒城の月や黒田節のカバー、マイン祭のテーマソングでもあった「結う」など、K AO=Sらしさを存分に詰め込んだ素晴らしい曲目ばかり。ラストには、巡りゆく季節と出会いを歌った「桜香る」に乗せ、ドイツでの再演を誓って終演となりました。
時に艶やかに時に勇ましく舞い、力強く豊かな声で歌う川渕さん
国も言語も超え、音楽を通して人の輪を繋げるKAO=S。独自の音楽で結んだ縁をもとに、さらなる活躍とドイツでの再演を期待しています。
KAO=S オフィシャルウェブサイト:kaos-japan.net
2003年秋より、わずか2週間の準備期間を経てドイツ生活開始。縁もゆかりもなかったこの土地で、持ち前の好奇心と身長150cmの短身を生かし、フットワークも軽くいろんなことに挑戦中。夢は日独仏英ポリグロット。 Twittter : @nikonikokujila