ジャパンダイジェスト

芸術×テクノロジーの歴史をたどる展覧会「神々の機械室」

3月8日(水)~9月10日(日)まで、フランクフルトの彫刻美術館リービークハウス(Liebieghaus)では「神々の機械室-私たちの未来はどのようにして発明されたのか」と題した特別展が開催されています。芸術とテクノロジーのつながりに焦点を当てたユニークな企画で、古代エジプトやオリエント、ギリシャ・ローマから中世、ルネッサンス期、そして現代の科学や歴史、文化が芸術に与えた影響について、100点近い作品を通して紹介しています。

まずは古代エジプトを紹介した展示室へ。よくあるミイラの展示やピラミッドの解説だけでなく、太陽の運行に合わせた建築や防腐技術を使ったミイラ作りとひつぎの装飾など、その科学技術の高さに感心させられました。続くギリシャ時代のコーナーでは、今では当たり前の存在となっている宇宙船、飛行機、さらにアンドロイドや人工知能のようなものが登場するギリシャ神話が紹介されています。このような発想がすでに紀元前7~6世紀に書かれていたとは驚きです。

死生観・科学・芸術が融合して生み出されるミイラ死生観・科学・芸術が融合して生み出されるミイラ

またローマ時代のコーナーでは、ローマ皇帝ネロの宮殿にあった、人工の星空が回転するドームの仕組みをデジタルで再現。これはプラネタリウムの前身ともいえる技術なのだとか。ほかにも、当時の水力やてこの原理を利用した土木作業の様子がCGで分かりやすく解説してあったり、縦にスリットの入った円筒を回転させることで、中に置かれた彫刻が動画のように動いて見えるゾートロープを再現したものがあったりと、当時の技術を実際に体験できるのが面白かったです。

ローマ時代の発掘品を再現して作られたゾートロープローマ時代の発掘品を再現して作られたゾートロープ

どれも非常に興味深いですが、なかでも魅力的だったのは「アンティキティラ島の機械」と呼ばれる遺物の再現展示です。これは1901年にギリシャのクレタ島沖の難破船から発見された機械の部品で、2000年以上前に作られた世界最古のアナログ天文学計算機だといわれています。腐敗した30個の青銅製の歯車と82個の断片からなる遺物は、長きにわたりその原型と用途、仕組みが研究されてきました。

アンティキティラの機械の詳細説明映像アンティキティラの機械の詳細説明映像

ここでは最新のデジタルモデルを展示し、日食や月食、太陽系の惑星の位置を手動で割り出せる装置として、その仕組みを説明しています。古代科学技術を極めたこの装置を現代科学で再現したモデルは、それ自体が芸術作品のような美しさ。古代から現代に至るまで、5000年にも及ぶ芸術とテクノロジーを分かりやすい解説や映像、作品で体感することができました。

リービークハウス:www.liebieghaus.de

ユゴ さや香
2003年秋より、わずか2週間の準備期間を経てドイツ生活開始。縁もゆかりもなかったこの土地で、持ち前の好奇心と身長150cmの短身を生かし、フットワークも軽くいろんなことに挑戦中。夢は日独仏英ポリグロット。 Twitter : @nikonikokujila

 
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