フランクフルトでは、30分にわたって街中が教会の鐘の音に包まれる日があります。10の教会の50個もの鐘が一斉に鳴り響くのです。この鐘の共演(Frankfurter Stadtgeläute)は年4回、第1アドヴェント(待降節)前の土曜日と12月24日、復活祭前日の聖土曜日、聖霊降臨祭に実施されています。
記録に残る最も古い一斉鳴鐘は、1347年に神聖ローマ皇帝ルートヴィヒ4世の死を悼んで鳴らした時だそうで、皇帝選挙が行われた際にも、選挙開始の合図として街の鐘を同時に鳴らしていました。1856年にフランクフルト自由都市の上院にて復活祭、聖霊降臨祭、クリスマスの各祝日前夜と当日朝に鐘を鳴らすことが決議され、現在のように定期的に鳴鐘が実施されるようになりました。
そんな歴史ある教会の鐘も、第2次世大戦までは個々の独立した音がバラバラに響いている状態でしたが、1954年にマインツの音楽教授パウル・シュメッツ氏によってすべての鐘の音が調和するよう設計され、現在では50個の鐘の音がハーモニーを奏でるようになりました。
鉄の橋は夜景と鐘の音の両方を楽しめる人気スポット
残念ながら、すべての鐘を同時に聞ける場所はなく、鐘が鳴る30分間、街を歩きながら音を楽しみます。私はまずハウプトヴァッヘから出発し、ゲーテが洗礼を受けたカタリーネン教会の鐘の音を背にツァイルを東へ進みました。遠くにペータース教会の鐘の音を聞きつつ旧市街へと南下すると、リープフラウエン教会の鐘の音が合わさり、さらに南へ進むとパウルス教会から華やかな鐘の音が。一番のお勧めスポットであるラーツケラー(Ratskeller)横の路地に入ると、建物に反射して共鳴した音が体全体を包み、音の波に酔いしれました。
東方ではカルメリーター修道院の鐘が微かに響き、南方のレーマーベルクではパウルス教会とニコライ教会、大聖堂の計19の鐘の音が美しいハーモニーを奏でます。そして大聖堂の西にある聖霊教会の鐘の音を耳にしたらマイン川へ。鉄の橋(Eiserner Steg)の上には多くの人が集い、金融街の夜景の下、大聖堂と川沿いのレオンハルト教会と川向こうの 三王教会の音に耳を傾けていました。そこから再びレーマーベルクへ戻ったところで鐘の共演時間は終了となりました。
身近な教会の鐘もこうして聞くと、地形により幾重にも重なり合って美しい音になることが分かります。1歩進むごとに変化する音の調和が素晴らしい感動の30分間。機会があれば、ぜひお試しあれ。
パウルス教会向かいのラーツケラーから抜ける路地では、
素晴らしい反響音が生み出される
2003年秋より、わずか2週間の準備期間を経てドイツ生活開始。縁もゆかりもなかったこの土地で、持ち前の好奇心と身長150cmの短身を生かし、フットワークも軽くいろんなことに挑戦中。夢は日独仏英ポリグロット。