1165年に建てられたライプツィヒのニコライ教会は市内でも最も古く、さらにベルリンの壁崩壊に繋がった月曜デモの出発点として有名です。1452年に取り付けられた鐘「オサナ (Osanna)」は礼拝時に使われるだけでなく、火事や嵐など危険を知らせる役目も担い、市民を守ってきました。しかし、残念ながらオサナは第一次世界大戦時の空襲に遭い、溶けて失われてしまいました。ニコライ教会には1917年までは4つ、東ドイツ時代からは3つの鐘がありましたが、昨年からオサナを含む鐘を復活させるため、寄付を集めるプロジェクトがスタートしました。費用65万ユーロは、ライプツィヒの銀行シュパーカッセ、東ドイツ・シュパーカッセ財団、ザクセン州プロテスタント・ルター教会とドイツ歴史建造物保存財団のほか、一般市民からの寄付により予想以上に短い期間で集められました。
クレーン車で塔に取り付けられる6.5トンの鐘オサナ
半年以上の制作期間を経て、ようやく完成した鐘を教会の塔に取り付けるために、6月末の金土日の3日間かけて盛大なセレモニーが行われました。初日の金曜は、約700人のライプツィヒ市民が鐘を乗せた車両とともに約2時間行進しながらニコライ教会まで誘導。その後、教会前の広場に用意された大きなステージの上で鐘がライトアップされ、深夜までお祝いが続きました。土曜にはヨアヒム・ガウク元大統領が演説を行い、日曜の礼拝後には大きなクレーンで吊るされた鐘が教会の塔にいよいよ取り付けられました。
ニコライ教会横の広場で行われた祝祭
新しく取り付けられた8つの鐘のうち6つが新しく製作されたもので、2つは修復されたものでした。これらの鐘は、ベルリンの壁が崩壊した1989年から30年目を節目に、ライプツィヒの平和革命にとって最も重要な10月9日にお披露目され、この街に新しい音を鳴り響かせることになります。
鐘オサナに描かれたノミ
後日談として、3日間もかけて行われた祝祭の後で、ひと騒動がありました。新しいオサナには芸術家カーステン・トイマーが「ノアの方舟」をテーマに動物を刻み込んだのですが、その中にスターウォーズから影響を受けたノミのような昆虫も描かれていました。しかし、病気を感染させるノミを重要な鐘に描かれたままにはできないと猛反発が起きたため、除去作業が予定されています。
ちなみにわが家の2人の娘たちがニコライ幼稚園に通っていることもあり、この教会は個人的にも縁のある場所です。このような歴史的な変わり目に立ち会えたことをうれしく思っています。
ニコライ教会:www.nikolaikirche.de
福岡県出身。日独家族2児の母。「働く環境」を良くする設計を専門とする建築家。2011年に空き家再生社会文化拠点ライプツィヒ「日本の家」立ち上げ、18年まで共同代表。15年より元消防署を活用した複合施設 Ostwache共同代表。
www.djh-leipzig.de