地下鉄、Sバーン、バス、トラムと、公共交通機関が発達しているフランクフルトですが、月1回、昔ながらの機関車が走る場所があります。毎月第1日曜日の10:00~17:00まで、軽便鉄道博物館(Feldbahnmuseum)では、蒸気機関車を中心とした軽便鉄道が走っています。
軽便鉄道とは、通常の鉄道に比べて低コスト、低規格で作られた鉄道のことで、元は炭坑や採石場などの内部輸送に利用されていました。この博物館は、輸送手段の発達により衰退した軽便鉄道について知ってもらうことを目的に、鉄道ファンのボランティア会員によって運営されています。
方向転換の時、客車を降りて間近で見つめる乗客たち
現在、博物館には16台の蒸気機関車や24台のディーゼル機関車を含むコレクションがあり、各車両は個人の所有物ですが、博物館が借り受けて運行しています。線路を走ってこその機関車ということで、いつでも動かせるよう常に車庫で整備され、交代で客車を引きます。私が訪れたのは、「テディベア急行」と題された日。クマのぬいぐるみを持参した14歳以下の子どもは入場無料になるということで、テディベアを手にした子どもたちがたくさん来ていました。また、整備された機関車が並ぶ車庫では、手作りケーキやソーセージも販売され、列車を見ながら軽食を味わうことができます。その売り上げは、機関車の整備や博物館の運営に役立っているそうです。
列車が駅に近付くと、子どもたちは目を輝やかせて手を振り、カメラを構えた鉄道ファンが一斉にシャッターを切ります。シューシューという蒸気と、ポーポーという汽笛を響かせて走る機関車には、鉄道ファンならずとも胸が高鳴ります。私が乗った時は、1912年製造の蒸気機関車が客車を引っ張ってくれました。一般の重厚な機関車鉄道に比べ、素早く設営可能な狭い線路を走る軽便鉄道は、まるで精巧に作られたおもちゃのような親しみやすさがあります。
荷台を引いたディーゼル車が脇を運行しています
線路は個人菜園を抜け、広いレープシュトック公園(Rebstockpark)へ。緑と赤のかわいらしい車体が煙突から煙を上げ、パイプから蒸気を吹き出して公園内を走ります。途中で荷台を引いたディーゼル機関車とすれ違ったり、切符にパンチをしたり、メッセタワーを眺めつつ、公園内の駅に到着すると、手動で連結を切り離し、先頭機関車が最後尾に移動して方向転換。その様子を近くで見ようと、客車を降りて見つめる乗客もいました。往復30分ほどの軽便鉄道乗車体験。普段利用する電車とは違った雰囲気を存分に楽しむことができました。
軽便鉄道博物館 Feldbahnmuseum: www.feldbahn-ffm.de
2003年秋より、わずか2週間の準備期間を経てドイツ生活開始。縁もゆかりもなかったこの土地で、持ち前の好奇心と身長150cmの短身を生かし、フットワークも軽くいろんなことに挑戦中。夢は日独仏英ポリグロット。