はじめまして! 今月からハンブルクの私の街のレポーターを務める岡本黄子です。ハンブルク郊外の街であるヴェーデルに暮らしています。ハンブルクやその周辺地域の魅力をお伝えできればと思います。
大型船は迫力満点!
私の住むヴェーデルは、シュレスヴィヒ=ホルシュタイン州にある人口約3万4500人の小さな街。ハンブルクから西へ約17キロ、エルベ川の右岸に位置しています。ヴェーデルといえば、船舶の出入港を歓迎する「ウェルカムポイント」(Willkommen Höft)が有名です 。世界各国の貨物船がここを通りかかると、マストに国旗がするすると登っていき、その国の国歌が流れます。そして「ようこそ、ハンブルクへ! ハンブルクの港にお迎えできることはこの上ない喜びです!」と、まずはドイツ語で、そしてその国の言語で歓迎の言葉が鳴り響きます。Willkommen Höftは、正式な海図にも記されているので、世界中の船乗りはヴェーデルがどこにあるのかちゃんと知っているそうです。
エルベ川沿いにある小さなこの港は、天気の良い週末には多くの観光客でもにぎわっています。プロムナードのベンチに腰掛けて日光浴をしたり、散策の後、ちょっと小腹がすいたら屋台でFischbrötchen(丸いパンにニシンの酢漬けや、揚げた魚を挟んだもの)を食べたり。また、Willkommen Höftに併設されているカフェレストランSchulauer Fährhausのテラス席では、コーヒーや自家製ケーキを楽しみながらエルベ川に沈む夕日を眺めることもできます。テラス席では、コンテナを載せた大型貨物船が悠々と通り過ぎていく様子も見られ、ちょっとしたバカンス気分ですね。Queen Maryなどの大型クルーズ船が通る時は、人だかりができることも。
のんびり過ごせるSchulauer Fährhaus
さらにSchulauer Fährhausの中にいるお客さんには、通った船の名前や大きさ、重さ、国名などの詳しい説明が逐一アナウンスされます。というのも、ここで働いているBegrüßungskapitänen(日本語だと、歓迎キャプテン?)が、その日の船の通過状況など情報を把握し、国歌を流したり国旗を揚げたりする操作やアナウンスを行っているのです。1日に約50隻の船が通るそうで、現在は5人のキャプテンが交代で、Fährhausの一角に設けられた部屋でセレモニーの操作をしています。
そして、その仕事部屋には1万7000もの船の情報が手書きされたカードが保管されています。国歌を流す操作は今でこそデジタル化されていますが、昔は地元の男性コ-ラスや楽隊が、船を迎え入れるためにエルベ川で生演奏もしたとか。歓迎を受けた船は汽笛を鳴らしたり、旗を振ったりして応答してくれます。
ウェルカムポイントの看板
ちなみに、1952年6月の開港時に初めてここで歓迎を受けた貨物船は、「あかぎ丸」という日本の船だそうです! 君が代が流れた時、船員さんたちはどんな思いだったでしょうか。
ハンブルグ郊外のヴェーデル市在住。ドイツ在住38年。現地幼稚園で保育士として働いている。好きなことは、カリグラフィー、お散歩、ケーキ作り、映画鑑賞。定年に向けて、第二の人生を模索中。