ドイツではよく知られた、ヴィルヘルム・シュレーダー作の『ウサギとハリネズミ』という童話をご存知でしょうか。グリム童話の中に収められているのですが、日本でもよく知られるイソップ寓話の「ウサギとカメ」と似たようなお話です。足の速いウサギがゆっくりしか歩けないハリネズミをばかにするので、ハリネズミの提案で競争することになるのですが、イソップ寓話のウサギとは違い、こちらのウサギは全速力で走ります。ところがゴールに到着すると、すでにハリネズミがゴールしていた、というお話です。
郷土博物館の外壁は芸術的!!
実はゴールで待っていたのはハリネズミ本人ではなく、その奥さんだったのですが、ウサギは自分の負けが認められず、何度も競争を繰り返します。このハリネズミを「ずるい」と取るか、「知恵を使って夫婦で協力する」と取るかは、それぞれの判断にお任せするとして、この物語はハンブルク市の南西に隣接するブクステフーデという街が舞台。そのため、この街は2007年からドイツ・メルヘン街道に含まれることになり、ハリネズミとウサギのマスコットは、この街のお土産として知られています。ちなみにバロック時代の大作曲家、ブクステフーデはこの街に住んだことがないようですが、その先祖を14世紀までさかのぼれば、一族としてはブクステフーデ出身だそうです。
現在のブクステフーデは人口4万人の小さな地方都市ですが、14世紀にはエルベ川の支流エステ川を通じた貿易によって、ハンザ同盟都市として栄えました。街中を運河が通り、商品を小舟で搬送した当時の様子がうかがえます。旧市街は美しい木組みの家が立ち並び、「メルヘンの街」にふさわしく、どこを歩いても絵になる街並みです。特に現在郷土博物館になっている建物は、「レープクーヘン・ファサード」と呼ばれる美しい外壁が特徴。以前私が訪れたときはちょうど改装中で中に入れなかったのですが、多くの工芸作品と宗教作品が展示されているとのことなので、ロックダウンが明けたら再び訪れたいと思っています。
運河沿いの街並み!
街には地ビール醸造所があり、ピルスナーとデュンケルの2種類を醸造しています。直営レストランで味わうこともできますし、お土産に買って帰るのもおすすめ。このレストランの外壁も、梁に美しい彫刻が施されていて一見の価値があります。また9月の最終週末にはオクトーバーフェストが開催されているそうですが、今年はどうなるでしょうか。ブクステフーデは、ハンブルク中央駅からS バーンで40分。気軽に行ける距離なので、メルヘンの世界を求めて、ぜひ一度出かけてみてください。
ハンブルグ日本語福音キリスト教会牧師。イエス・キリスト命。ほかに好きなものはオペラ、ダンス、少女漫画。ギャップが激しいかしら?
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