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「性別とは何だろう」 Anjoさんと黄色いポスター

ドイツ語で手紙やメールを書くとき、Lieber / Liebeなど、相手の性別によって書き出しが変わります。自分にとって馴染みのない名前だと、僕はまず名前をネットで検索し、出てきた写真を見て女性なのか男性なのか確認することも。ほかにも名詞には男性、女性、中性の区別があったり、職業をArzt / Ärztin(男性の医者/女性の医者)と区別したりするなど、ドイツ語には性別を区別する傾向があります。そして最近よく見かけるのは、「*」(Gendersternchen)のマークです。Liebe*r、Arzt*inのように使用するこのマークには、性別を区別することへの疑問が込められています。そんな性の多様性への意識を社会に投げかけるポスターが、ブラウンシュバイク市で掲示されました。

性の多様性を訴える旗性の多様性を訴える旗

秋の深まりを感じさせる10月。市庁舎には黄色の生地に紫色の丸が描かれた旗が掲げられ、風に揺れる旗を見つめるAnjo Kumstさんの姿がありました。そしてAnjoさんを含めた6人の写真が入ったポスターが、市中30カ所に10日間掲示されたのです。6×9メートルの大きなポスターに、「私はインターです。そう見えるでしょ」というキャッチコピー。そして「ニーダーザクセン州には約2万人のインターセクショナリティーの人がいます」という文言が続きます。インターセクショナリティーというのは、「LGBTQI」の「I」に当たる存在です。トランスジェンダー(T)が心と体の性が一致しない人たちのことを指すのに対し、インターセクショナリティーは、生殖器、臓器、染色体、ホルモンなど体の構造が、男と女という枠組みに分類されない人たちのことです。

先ほど僕は馴染みのない名前の場合、検索した写真を見て、女性なのか、男性なのか「見た目」で判断していたと書きました。この例からも分かるように、僕たちの社会は男と女の枠組みを強いる傾向があります。その結果、インターセクショナリティーの特徴を持った人の多くは、手術やホルモン治療という処置によって「強制的に」男性か女性に寄せられてきました。

Anjo KumstさんとポスターAnjo Kumstさんとポスター

しかし、社会の強いる性別に分類できない存在がいるのなら、その分類は見直されるべきでしょう。そうした思いを持った当事者たちの運動の実りとして、ドイツでは性別を「Diversity」として登録できるようになり、子どもに対する上記のような手術が禁止され、少しずつ性の多様性への理解が広がってきています。

インターセクショナリティーの運動を担っているAnjoさんは、記者会見でこのように語っていました。「社会の中で見えない存在を可視化させたい。そして本当は私がここに座らなくてもいい社会になることを望んでいる」と。関心のある方はこちらのサイトを見てみてください。

Ich bin Inter* – Intergeschlechtliche Menschen Landesverband Niedersachsen e.V.:https://im-nds-ev.de/ichbininter

国本隆史(くにもと・たかし)
神戸のコミュニティメディアで働いた後、2012年ドイツへ移住。現在ブラウンシュバイクで、ドキュメンタリーを中心に映像制作。作品に「ヒバクシャとボクの旅」「なぜ僕がドイツ語を学ぶのか」など。三児の父。
takashikunimoto.net
 
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