ライプツィヒ西部のプラグヴィッツ地区に、一風変わったアンティークハウス「Zeughaus」があります。これは廃校となっていた、1900年頃に建てられた小学校を改築したもので、地下から4階までの各教室に、家具をはじめとするアンティークの品々がびっしりと置かれています。Zeughausとは本来、「造兵廠(ぞうへいしょう)」という意味で、武器や弾薬などを管理する軍直属の建物のことを指しますが、ここでは「Zeug=物」と「Haus=家」で、物が詰まった場所という意味で使われています。
かつての小学校として大きな窓のあるどっしりとした印象の外観
このアンティークハウスのオーナーであるハウスナーさんは、以前はライプツィヒ市内の別の地区でアンティーク店を経営していましたが、引っ越しが必要になったために、より広いスペースを探したところ、偶然この廃校を見付けて2006年にここへ店舗を移転しました。建物内には、ハウスナーさんの商品が並ぶほか、約10の販売主が元教室を賃貸して店を構えています。古いバイクや自転車を専門に取り扱っている店から、主に英国のアンティーク家具を販売する店、古本を置く店まで、それぞれの教室に表情があります。また、各教室の扉にはネームプレートが掛けられ、「ルイーゼ」や「ベルント」など、親しみやすいドイツ人の名前が記載されています。
ハウスナーさんのコレクションが並ぶ一角
さらに、かつての理科室を再現したような一角があり、ここはハウスナーさんのコレクション置き場として特に異彩を放っています。昆虫や動物の標本、剥製、人体模型や義足など、販売品と展示品があり、フラミンゴの剥製や義足を天井から吊るし、鳥の鳴き声をオーディオで流すなど、展示方法も実にユニークです。ハウスナーさんによると、彼は母親の死に直面した際、「死」に対する考え方が変わり、「死」に関する別の側面を映し 出したいという想いから、このようにほかでは見られない収集や展示を始めたそうです。また、それまでは家具など一般的なアンティークを扱っていたそうですが、昔から科学にも関心があったというのも、ユニークな物を揃えるようになった理由の1つ。コレクションは映画やテレビ、舞台の道具としても頻繁に貸し出しており、アーティストや写真家から問い合わせを受けることも多いそうです。
さらにここには、現在では滅多に目にすることができない古い道具もあります。昔の歯医者の診療台や、鍛冶屋が使っていた、空気の流れを作る鞴(ふいご)など、各教室を探索すればするほどに発見のある楽しい場所です。
Antique Haus Zeughaus
Engertstraße 14, 04177 Leipzig
月~金 12:00~19:00
土 12:00 ~16:00
福岡県生まれ。東京理科大学建築学科修士課程修了後、2003年に渡欧。欧州各地の建築設計事務所に所属し、10年に「ミンクス.アーキテクツ」の活動を開始。11年よりライプツィヒ「日本の家」の共同代表。www.djh-leipzig.de