一時期の「難民」受け入れの波が過ぎ、ドイツ語コースの提供や直接的な物資救援から支援の形も変化してきています。難民認定を受けた人達は、仮収容先の集合住宅を出て自らの力で住む場所を探し、仕事を見つけて家賃を払って生活していかなければなりません。「難民」としてドイツに辿り着いた人達は、これからは「移民」として社会にインテグレーション(統合)していくことになります。
母親同士で次回までの課題の確認
ドイツ社会で移民が生きていくためには、例えば子供達は学校に通い適切な教育を受けることも重要です。ドイツ語を覚えることは前提条件ですが、ほかにもさまざまなサポートの形があります。ライプツィヒにあるNPO 団体フェアブンド(FAIRbund e.V.)は、2014年からヒッピー (HIPPY=Home Interaction for Parents and Preschool Youngsters)というプロジェクトを行っています。小学校に上がる前の子供を持つドイツ人家族と移民家族をパートナー形式にして組み合わせて、2週間に一度どちらかの自宅を訪問します。そこでフェアブンドから提供される教材をお互いの子供達が一緒に学び、小学校に入るまでに必要な準備を整えていきます。 プログラムは1年毎に更新され、何年も続けて参加している家族もいます。特定の家族同士がパートナーになることで、関係が非常に個人的になり結び付きが強くなります。それこそ小さな子供達はドイツ語の環境に素早く順応出来るとしても、ドイツの教育システムを親が理解し、宿題など我が子をサポートする家庭環境を築くことが大切になります。ヒッピー・プロジェクトには、シリアやアフガニスタンなどからライプツィヒへ移住してきた家族、56組がこれまで参加してきました。今年も10月から新しく次の回が始まっています。
子供に教材の練習を説明する母親
200名を超えるスタッフのいるフェアブンドは、ヒッピー・プロジェクトのほかにも幼稚園の運営や、心理的なトラウマを抱える難民・移民のカウンセリング、教育と仕事のアドバイスなど支援のやり方も多岐にわたります。素晴らしい活動の一方で、運営には幾つもの助成金をやり繰りし、多くの人からの寄付金とボランティアでなんとか成立しているそうです。困っている人がいれば、自分のできることで支援の手を差し伸べるーードイツ人のインテグレーションを支える姿勢からは、宗教観からだけでなく、自分達の住む国に移民を受け入れて共に生きていこうという強い意志があるように思います。
NPO団体フェアブンド:verein-fairbund.de
ドイツ建築家協会認定建築家。福岡県出身。東京理科大学建築学科修士課程修了後、2003年に渡欧。欧州各地の設計事務所に所属し、10年から「ミンクス・アーキテクツ」主宰。11年より日独文化交流拠点ライプツィヒ「日本の家」の共同代表。
www.djh-leipzig.de