私の街のレポーター ミュンヘン München

ドイツの観光スポットとして外せないものの一つに、お城があるでしょう。宮殿や城塞、大邸宅を合わせると、ドイツ国内にはなんと2万カ所もあるのだとか。なかでもノイシュヴァンシュタイン城は有名で、自然豊かな田園風景の中、小高い丘にそびえる壮麗な白亜のお城は、多くの観光客を魅了しています。人気のあるお城だけに、見学のために予約が必要だったり、長い時間並んで待つことが必要だったりする場合もあります。

シュライスハイム城の新館と庭園の一部

そこで今回は、ミュンヘン郊外にあるシュライスハイム城をご紹介します。ここはあまり知られていませんが、実はとても見応えのあるお城なのです。何といってもミュンヘン市内からSバーンで行けるのがうれしいポイント。S1のOberschleißheim駅で下車し、そこから徒歩15分くらいでお城に到着します。駅から路線バスに乗ることもできますよ。もちろん駐車場もありますので、車でも行けます。

エマヌエル選帝侯の絵画コレクションが並ぶ大ギャラリーは圧巻!

ほとんど人通りのない、ひっそりとした住宅街から、突然瀟洒( しょうしゃ ) な巨大宮殿が現れて、まずそのギャップに驚きました。シュライスハイム城は、運河のあるフランス庭園を挟んで、旧館、新館、ルストハイム城の三つからなり、一直線に並んでいます。3カ所とも内部を見学できますが、「マックス・エマヌエル選帝侯のベルサイユ」と呼ばれる中央の新館は必見。ふんだんに装飾が施されたバロック様式で、本家ベルサイユの鏡の間をほうふつとさせる大ギャラリーや、天井画と漆喰( しっくい ) の装飾が美しい大ホール、階段の間など、規模的にも豪華さでも圧巻です。なぜあまり知られていないのか、不思議でなりません。ルストハイム城には、マイセンをはじめとする陶磁器コレクションが展示されています。往年の貴族たちはステータスとして、各地の名だたる陶磁器をコレクションしていたようですが、その中には伊万里焼きもありました。

伊万里焼きのコレクションも豊富です

シュライスハイム城のもう一つの大きな魅力は、広大な庭園です。きれいに手入れされたフランス庭園には季節の花が植えられ、美しい幾何学模様を形作っています。宮殿の上階から見下ろすと、その美しさは格別でしょう。噴水と運河には水鳥が遊び、その両脇には並木道があって、お散歩にもぴったりです。庭園には無料で入場できるので、これからの季節、お弁当を持って家族でピクニックもいいですね。お城の脇にビアガーデンもあり、そちらで休憩することも可能です。

かつての王侯貴族たちが、自分のため、または自分や一族の権勢を誇るために建設したお城たち。これらが後の時代に、こうして一般市民の楽しみのために提供されることになろうとは、果たして彼らは想像していたでしょうか? そんなことを考えながら、お城を後にしました。