何でも使い捨てする時代は過ぎ去り、限りある資源を有効に活用し、いかに再利用できるかに知恵を絞ることが求められる時代となりました。環境問題に関して意識の高いドイツでは、特にその傾向が強いように思います。今回は、物に限らず、人材や技術もお互いに提供し合おうとする「shaere München」(シェア・ミュンヘン)の取り組みをご紹介しましょう。
シェア・ミュンヘンの入口
ミュンヘン南東部にある大手保険会社が拠点を郊外に移した際、その4万平方メートルにも及ぶビルは数年後に取り壊されることになりました。しかし、まだ十分に使えるそのビルが取り壊されるまでの間、存分に活用しようと、社会福祉事業「シェア・ミュンヘン」が立ち上げられました。
モットーは「人から人へ。あなたのアイデアのための場所」。ビル内には、大中小さまざまな大きさの部屋があるので、文化、教育、芸術センターとして、自分の技術やアイデアをほかの人に共有(シェア)したい人が部屋を借りることができます。
さらにセンターの趣旨に沿ったもので、無料で提供できる教室やイベントなら、部屋も無料で借りられます。外国人のためのドイツ語教室をはじめ、演劇クラブ、子どもたちの工作コーナーや図書コーナーなどが無料で開催されていました。ほかにもセンター提供の映画上映会や講習会も行われています。なお、カルチャースクールのように講習料を徴収する場合は、部屋の賃料がかかります。現在はバレエ教室や音楽学校などが入っていて、人気のようです。
もともと社員食堂だった場所は、スーパーマーケットなどで売れ残った食材を回収して、その材料で作った食事を安価で提供する「コミュニティ・キッチン」になっています。その日その日に入ってくる食材が違うので、どんな料理が出てくるかは行ってからのお楽しみ。毎日2種類の料理とサラダバーが提供されています。またコミュニティ・キッチンで使い切れない食材はシェアコーナーに置かれ、誰でも無料で持ち帰ることができます。
食材シェアコーナー。食材が届くのを待っている人もいます
ほかにも「シェア」という趣旨で面白いと思ったのは、食器を無料で借りられるコーナー。自宅や会社などで盛大なパーティーを開きたいと思ったときなどに、おそろいの食器を一式借りられるのです。洗って返せばOK。これは良いアイデアと思いました。シェア・ミュンヘンについてもっと知りたい人のためには、毎週月曜16時半から、45分間の館内案内説明会が行われているので、気になる方はぜひのぞいてみてください。
コミュニティ・キッチンの奥にも広いスペースがあります
このようにシェア・ミュンヘンはさまざまな可能性のある意欲的な取り組みですが、建物の契約期間は2024年末まで。運営者は、この活動を長く続けるために交渉しているそうです。私も、ぜひこの場所を続けてほしいと願っている一人です。
イエス・キリストに出会って、声楽専攻から牧師に転身。2022年よりミュンヘン日本語キリスト教会牧師。今でも少女マンガ、オペラ、ダンスは大好きです。 www.muc-japan-christ.com/