ドイツを代表する製造業各社が本拠を置き、長い歴史を誇る大学がいくつも集まるミュンヘンでは、“メイド・イン・ジャーマニー”の伝統を守り、発展させるため、企業と大学が多数の産学協同プロジェクトを組み、またインターンシップの機会を設けて、実践を積んだ優秀な学生の育成に努めています。それを象徴する街が、ミュンヘンの北東に位置するガルヒング(Garching)。ここは1万人以上の学生と約6000人の研究者が集まるドイツ有数の学術研究都市で、ミュンヘン工科大学(TUM)の5学部(機械工学、化学、物理、数学、情報工学)をはじめ、大手の研究機関や企業が、当地の研究施設で基礎研究や最先端技術の実用化に励んでいます。
明るく開放的な吹き抜けの建物
10月15日は、日頃の研究活動を一般市民にも知ってもらおうと年に1回開かれているガルヒングのオープンデーでした。研究者による講演をはじめ、大人も子どもも楽しめるプログラムが企画されていると聞いて、私も参加してきました。今年の主要テーマはナノテクノロジーと電気自動車。ナノテクノロジーのコーナーでは、「ナノ・トラック」というデモ・カーが用意され、一般庶民には縁遠いミクロの世界の研究がどのように私たちの日常生活を快適にする可能性を秘めているかをアピールしていました。この車の中は常時満員で、ゆっくりと展示を観ることができなかったのが残念でしたが、未知の分野について少しでも知識を得られたのは、大きな収穫でした。
自動車産業の未来にとって重要な意味を持つ電気自動車のコーナーでは、TUM が製作した軽量で燃費の良い電気乗用車が展示され、それと合わせて民間企業の未来都市研究プロジェクト(smart city)が紹介されました。これは、車だけでなくエネルギーや安全性、コミュニケーション、環境政策などすべてを盛り込んだ新しいインフラ構築の構想です。現時点では、法制面での難しさ(ここで紹介されたデモ・カーは、公道を走ることができないのです!)など、課題は多いそうですが、今後この構想がどのように発展していくのか、楽しみになりました。
ナノ・トラックは常時満員でした
さらに注目すべきなのが、キャンパスの美しさ。緑豊かな敷地に点在する建物は吹き抜け構造を多用しており、明るく開放的です。敷地内には池や噴水もあり、そこに面して夏にはビアガーデンとしても使えそうな、広々としたテラスがあります。小さな子どものいる学生や研究者のため、保育施設も完備されて、これらの点ではやはり、ドイツは先進的だなあと感じさせられました。
学術研究都市ガルヒング : www.forschung-garching.de
2002年からミュンヘン近郊の小さな町ヴェルトに在住。会社員を経て独立し、現在はフリーランスとして活動中。家族は夫と2匹の猫で、最近の趣味はヨガとゴルフ、フルート。