徐々に新型コロナ感染拡大予防策も緩和が進み、皆さんも日常を取り戻しつつあるのではないでしょうか?レストランでのお食事や街中への買い物なども、幾分しやすくなったのではと思います。私も、とても久しぶりにシュトゥットガルトの街中にあるマルクトハレ(屋内市場)をのぞいてきました。
6800平方メートルにも及ぶこの市場には、新鮮なお肉やお野菜はもちろん、魚介を扱う店や製菓店、スペイン生ハム専門店、お惣菜、乾物やパン屋などが立ち並びます。マーケットならではの活気があり、歩いているだけでも楽しくなってしまいます。このマルクトハレを注意深く歩いていると、レールが敷いてあることに気付く方もいらっしゃるかもしれません。このレールは、ドロテーエン通りから25メートルほどの長さで、反対側のマルクトハレ出口で突然途切れています。一体何のために造られたレールなのでしょうか?
目を引く鮮やかで珍しい果物たち
マルクトハレの関係者の方に聞いたところ、このレールは商品の輸送用に敷かれたのだろうと話します。1914年1月末、ドロテーエン通りに開業した現在のマルクトハレ。中を横切るマーケット内のレールは、その約2年前にすでに敷設されていました。ただ、この線路は使用されたことがないだけでなく、鉄道網にも接続されていなかったと考えられています。
19世紀、男性が畑で働き、果物や野菜、卵の販売は主に女性の仕事でした。しかし、畑からの商品の輸送は彼女たちにとって困難なもの。長さ2メートル、幅1メートルの重荷を積んだカートを市内の市場まで何キロも引っ張ってこなければならなかったのです。そのため、生産者が商品を直接市場に納品できるようにとマーケット内にレールが敷かれました。
市場ならではの厳選されたスペイン食材
一方でマルクトハレができた20世紀の初め、シュトゥットガルトはついに電動のトラムを導入し、鉄道網が拡張されます。この頃から、各方面と市場を結ぶ鉄道網が充実していきました。
第一次、第二次世界大戦中には、マーケット用の交通網が大幅に増加。マーケット貨車は負傷した兵士の輸送にも使用されたからです。そして戦後、それまで主に戦争のためにのみ使われていた車両と燃料が再び一般利用可能になり、この頃からマーケットの納品にトラックが使われ始めました。100年以上の歴史を持ちながら、時代の変化や戦争の影響によって使われることのなかったマーケット内のレール。お越しの際は、ぜひ見つけてみてください。
マルクトハレ内のレール
さらにマルクトハレの2階には、厳選された食品以外の商品も置かれています。またマーケット併設ならではの新鮮な食材を使ったお料理が楽しめるレストランなどもあるので、こちらもぜひ訪れてみてください。2階からマーケットを一望するのも楽しいです。
マルクトハレ・シュトゥットガルト:www.markthalle-stuttgart.de
大阪生まれ、東京育ち。2007年末よりシュトゥットガルト在住。Merz Akademie大学視覚コミュニケーション科卒。語学力を武器に、日本企業のリロケーションをサポートしながら、メディアデザイナーとしても幅広く活躍している。趣味はギターと読書。