ジャパンダイジェスト

カードでチャリティー「105×150プロジェクト」

昨今、ドイツの難民問題は世界から注目され続けています。シュトゥットガルトのあるバーデン=ヴュルテンベルク州では昨年1年間で14万人以上の難民申請を受けており、行政は宿泊場所をはじめとする受け入れ態勢を急ピッチで整えています。また、民間でも何かできることはないかと、状況改善のアイデアなどを模索する活動も始まっています。

私の在籍しているシュトゥットガルト造形美術大学では、学長が自ら教授と学生に呼びかけ、芸術アカデミーとしてできるプロジェクトを募集。その後、学内の有志が何度も自主的に集会を開き、熱いディスカッションが交わされました。

昨年12月に行われた、コミュニケーションデザイン学科のトーマス教授のクラスが立ち上げた「105×150プロジェクト」もその一つです。105ミリ×150ミリというのは、ポストカードのサイズ。このプロジェクトは、学内外からこのサイズのアート作品を募集し、チャリティー販売をするという趣旨のものでした。無地のカードが大学のクラス単位で配られましたが、参加はあくまで自由。また、一部のカードは、世界各地の有名アーティストにも郵送されたそうです。作品のテーマや技法はすべて自由で、タイトルと署名は裏面に記入するというユニークなもの。私も自分の写真作品と写真をベースにしたペインティングを10枚提出しました。

オープニングは12月10日で、当日は多くの人が集まりました。このプロジェクトを率いるトーマス教授と、芸術アカデミーのフォン・オルショヴスキ学長が、それぞれあいさつの言葉を述べ、それによると、今回の募集で国内外から800枚以上もの作品が集まったのだそうです。募金の送り先となる国境無き医師団のドイツ代表から感謝の言葉が述べられた後、展示会がオープン。100人ほどの来場者が一気に会場へ向かいました。

オープニングの様子
オープニングの様子

作品はすべて、一面の壁に設置してある7段の長いラックに置いてありました。もちろん、見えるのはアート作品のある表面のみ。反対側の壁では、サインの書かれている裏面を大きなプロジェクターでランダムに再生。そこには、有名・無名様々なアーティストの筆跡がありました。30分間の鑑賞時間を経てから、カード作品の販売が開始。1枚25ユーロという値段にも関わらず、カードが飛ぶように売れていきます。うれしいことに、私のカード2枚も開始5分で買われていきました。

壁一面のカード
カードは壁一面に並べられますが、誰の作品かは分からないようにしてあります

4日間限定の短い展示会でしたが、最終的には8000ユーロの募金が集められたそうです。自分たちの作品を通して、わずかながらでもこういった貢献ができて、とても光栄に思います。

こちらで作品の一部が閲覧できます。
www.instagram.com/105x150/

郭 映南
中国生まれの日本国籍。東北芸術工科大学卒業後、シュトゥットガルト造形美術大学でアート写真の知識を深める。その後、台北、北海道、海南島と、渡り鳥のように北と南の島々を転々としながら写真を撮り続ける。
www.kakueinan.wordpress.com
 
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