先月開催された「シュトゥットガルトの夜(Stuttgartnacht)」(市内さまざまな施設で同時に行われるアートと文化のお祭り)というイベントの一環としてバーデン=ヴュルテンベルク州内務省の新庁舎が一般公開されました。2013年に竣工したこの内務省の新庁舎は、中央駅のすぐ近くにあり、外から見た感じではモダンでストイックな印象を受けます。ところがこの日は、中に入ってみると人がたくさんいてお祭りのような雰囲気。メディアアートやパフォーマンス、音楽のライブ演奏もあり、普段は堅苦しいイメージの政府機関が、親しみやすい一面を見せてくれました。
第1アトリウムと巨大リング
そして、特別にこの日は建物についての簡単な説明とガイドツアーもありました。この新庁舎は200メートルもの長さがあり、大きく分けて6棟の建物からできています。この6棟がほぼ一直線に繋がっていて、内務省と環境・エネルギー局、消費者保護局など3つの政府機関が集まっています。この建物の完成により、以前は20カ所に散在していた各部門がようやくこの一カ所に集約されました。
ガイドツアーでは、廊下や階段、会議室、職員が働いているオフィスの個室が見学でき、また、写真で内務相の部屋も見せてくれました。館内はすべてコンクリートとガラスのシンプルなインテリアで、デザインを壊すようなものは一切ありません。開放感溢れる吹き抜けを囲むように、動線が簡潔にまとめられているため、使いやすそうな空間です。また、暖色のLED照明を使用することで、冷たくなり過ぎず、とても洗練された印象を受けました。
光とライブ音楽のショー
そして、この建築の見所はなんといってもアトリウムにある巨大なアート作品「3つのリング」です。これは、ドイツの建築家ライク・エリアスさんの作品で、大中小と大きさの異なる3つのリングが、それぞれ3つのアトリウムに違ったポジションで展示されており、一番大きい第1アトリウムのリングは直径13メートル程。巨大なリングが壁に寄りかかる様に立っていて、緊張感溢れる存在です。留め具が一切見えないように工夫してあり、まるで今にも動き出しそう。中と小のリングは材質こそ同じですが、こちらはアトリウムの上の方で、壁と壁の間に引っ掛かっている感じ。このリングの存在が、端正でおとなしい印象の空間に躍動感を与え、スケールを感じさせる役割を果たしています。
ガイドツアーの後には、巨大リングのある第1アトリウムで光とライブ音楽のショーが行われました。雰囲気は日頃の真剣さからガラリと変わり、リラックスモードに。普段気軽に行くところではないだけに、非日常的な楽しい夜になりました。
中国生まれの日本国籍。東北芸術工科大学卒業後、シュトゥットガルト造形美術大学でアート写真の知識を深める。その後、台北、北海道、海南島と、渡り鳥のように北と南の島々を転々としながら写真を撮り続ける。
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