シュトゥットガルトはたくさんの建築設計事務所が集中している街として有名です。そしてシュトゥットガルト大学も建築家の卵を世に送る教育機関として、常にランキング上位を保っているそうです。そんな「建築家の街」で先日、同大学の都市計画セミナーによる試作建築展が開催されました。その舞台はずばり、「自分たちが今住んでいる街」。若い学生たちが柔軟かつ奇想天外な発想を見せてくれました。
展示会場入り口
展示場所は昨年竣工したばかりの旧市立図書館を改築したStadtpalais博物館です。展示は工事現場のように鉄パイプで足場を組んで、観客がその中を上がって、一周できるようになっています。印刷されたプランと建築モデルのほか、プロジェクターやモニターをふんだんに使い、映像を見せたり音声付の装置を用いたりした、現代アート風の展示でした。学生たちがチームに分けられ、全部で21のプロジェクトの展示がありました。
レゴを使ったかわいいモデル
なかでも1番面白いと思ったのは、熱気球による空中交通網というものでした。展示パネルはSFの父と呼ばれる19世紀フランスの小説家ジュール・ヴェルヌの言葉で始まります。「たった1人の人間が想像できるものなら、ほかの人がそれをいつか実現するものです」。1863年に出版された『気球に乗って五週間』というヴェルヌの長編小説がこのアイデアの由来のようです。
熱気球やステーションのモデル
150年前の人間が空を飛ぶ驚異の旅は、今日においてのユートピア建築の発想に受け継がれているようです。そこには空中交通網の建築予定の場所やデザイン案が展示されていました。気球発着のステーションはなんとオーストリア広場の陸橋の下。広場から空へ突き抜けた長い街灯を目印として、空からの乗り物を迎え入れます。よく知っている場所だけあって、想像がさらに膨らんでしまいます。空想の「路線図」から見ると、この空中交通もS バーンの線路に沿って六つの方向へ伸びて行きます。駅の建物はエッフェル塔のように鉄骨を組み立てたトラス構造のようなもの。「空中交通」(Luftbahn)のロゴもすでに用意してあります。レトロで軽やかな雰囲気のデザインでした。
空中交通の中央ステーションの予想図
ほかのプロジェクトでは、自転車を漕いで自分自身で発電しながらオープンエア映画を鑑賞したり、ホームレスの人々の生活動線を考えたより快適な路上生活の未来図や、多目的な移動型個室もあったり、街の隙間を利用した数々の斬新なアイデアが見られました。シュトゥットガルトの未来が楽しみです。
中国生まれの日本国籍。東北芸術工科大学卒業後、シュトゥットガルト造形美術大学でアート写真の知識を深める。その後、台北、北海道、海南島と、渡り鳥のように北と南の島々を転々としながら写真を撮り続ける。
www.kakueinan.wordpress.com