ジャパンダイジェスト

花粉症とアレルギー性鼻炎

4~5月にかけて、くしゃみ、鼻水、目のかゆみがひどく大変でした。ドイツに来て5年目ですが、今までそのようなことはなく、花粉症なのか他の原因によるものなのか心配です。

ドイツで花粉症というと?

日本で花粉症というと、大半は「スギ花粉症」を指します。一方、ドイツを始めヨーロッパ各地では、イネ科の植物(Gräser)とシラカバ(Birken)による花粉症が知られているほか、さまざまな植物が花粉症の原因となっています(図1)。

ドイツの主な花粉の飛散時期

イネ科の花粉症

イネ科代表的なイネ科植物の花粉は5~8月初旬にかけて見られます。牧草として栽培されている「カモガヤ」が知られていますが、イネ科植物は違う種類でも花粉の共通抗原性が高 く、実際にはどの植物が原因かは特定できないこともあります。そのためドイツでは「イネ科花粉症」と総称されています。(写真:8月頃まで花粉が飛ぶイネ科植物)

シラカバの花粉症

シラカバシラカバの花粉は4~5月初めにかけてピークを迎えます。シラカバの葉や花で飾り付けた5月祭(Maibaum)が過ぎたあたりから症状は改善してきます。(写真:散歩には良さそうだけど……)

ドイツで花粉症に悩む人は1300万人

ビルト紙によると、ドイツでは約1300万人が何らかの花粉症にかかっていると推定されています。多くの場合は30歳前に症状が現れますが、最近は50歳を過ぎてからの発症も少なくありません。また、シラカバによる花粉症が増えているという報告もあります。これら花粉症患者の増加には、花粉症の認知の向上、生活習慣の変化に加え、環境の変化を指摘する声があります。

スギとヒノキの花粉症はない?

ドイツを含むヨーロッパにはスギの分布がないため、スギ花粉による花粉症はありません。交差抗原性の関係でスギ花粉症の人はヒノキの花粉でも症状を認めることが少なくありませんが、このヒノキもドイツにはないため、ヒノキ花粉症も認められません。日本でスギ花粉症に悩まされたのに、ドイツに来てからは症状が出ないというのはこのためです。

花粉症の原因は?

毎年特定の植物や樹木の花粉に接する機会が続くと、人によって体の中でその花粉を抗原(こうげん)とする特異的な抗体(こうたい)という物質ができます。この抗原抗体反応は鍵と鍵穴の関係にあるため、抗体のできた特定の花粉に対してしか反応は起こらず、特定の花粉(または同系植物の花粉)に対してのみ花粉症の症状が現れます。本来、抗体産生は外からの異物を排除するための生体防御の役割を果たしています(例えばインフルエンザ予防注射、麻しんのワクチンなど)。

どのような症状が出るの?

典型的な症状は、切りがない程の「くしゃみ」、水のような「鼻水」などアレルギー性鼻炎の症状で、約7割の人に見られます。また「涙が出る」「目がチカチカ痛む、かゆい」などのアレルギー性結膜炎の症状が見られる場合もあります。このほか、ひどくなると「だるさ」「集中力の低下」などの全身症状が見られることもあります。症状は必ずしも、外出時に増悪し、屋内で軽減するというわけではないようです(表1)。

表1 花粉症の主な症状
くしゃみ、鼻水、鼻のむずがゆさ、鼻づまり
目のかゆみ、涙、目の腫れぼったい感じ
全身 疲れやすい、だるさ、集中力の低下

花粉症と同じ症状が見られるアレルギー性鼻炎

花粉以外の抗原で、花粉症と同じ症状を起こすこともあります。代表例は、ダニなどのハウスダスト、カビ、動物の皮膚・毛などです。花粉症が季節と大きく関係しているのに対し、これらは通常通年性もしくは季節を超えて症状が見られます。アレルギー反応のしくみは本質的に花粉症と同様のため、症状もほぼ同じです。ハウスダストやカビは屋内で、動物の毛などはその動物を飼っている付近で症状が出現するのが特徴です。モルモットや小鳥などのペットが原因になることもあります。

発症するならドイツ1年目?

ある特定の花粉に対する抗体産生は、その花粉と接してきた時間と花粉の量に関係してきます。そのため、ドイツに来た最初の年には何ともなくても、数年の滞在後に当地の花粉症になることがあります。日本ではスギ花粉症にならなかったのに、ドイツでイネ科植物やシラカバの花粉症になる人もいれば、その逆の人もいます。

診断はどのように?

毎年繰り返される強い季節性のあるくしゃみ、鼻水などのアレルギー性鼻炎、結膜炎症状から花粉症を疑います。その症状の出現時期と特定の花粉飛散時期の情報により、原因となっている植物・樹木が推定されます。特定の花粉に対する抗体産生の程度は、採血を行い、血中の抗体価(こうたいか)を測定することにより知ることができますが、この抗体価と症状の強さは必ずしも100%は一致しないといわれています。

治療方法は?

症状が軽度であれば、その季節が過ぎるのを待てば良いのですが、症状が強く日常生活にも支障がでる場合は治療が必要となることがあります。通常は、くしゃみや鼻水などに対し、対症療法として抗ヒスタミン剤という経口薬が用いられます。これはヒスタミンという物質の分泌増加がアレルギー症状に関与しているためです。最近の抗ヒスタミン剤は、副作用は少ないものの眠気をもよおすことがあるため、長距離運転をする際には不向きです。ひどい鼻水に対しては点鼻薬、目の症状に対しては点眼薬が用いられます。原因となる花粉が特定された場合には、脱(減)感作療法が効果を奏することがあります。他にホメオパチーが試みられることもあります。詳細は掛かり付けの医師に相談してみましょう。

役に立つドイツ語
花粉症 Heuschnupfen、Pollinose
切りのないくしゃみ häufiges Niesen
鼻水が止まらない die Nase läuft ständig
目の灼熱感 Augenbrennen
涙が出て、目が痒い die Augen tränen und jucken
ハウスダストのアレルギー Hausstaub-Allergie
季節性のアレルギー性鼻炎 saisonale allergische Rhinitis
動物の毛 Tierhaare
シラカバの花粉 Birkenpollen
 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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