カフェインって?
カフェイン(Coffein)は覚醒作用、興奮作用、強心作用など多彩な薬理作用を持つ物質です。今から190年ほど前、ドイツの化学者ルンゲ(Friedlieb Runge)がコーヒー豆から発見し、この名が付きました。
飲食品中のカフェイン含量は?
コーヒー、紅茶、緑茶、コーラ、チョコレート、清涼飲料水の一部に含まれます(表1)。お茶では玉露に最も多く、麦茶ではゼロです。総合感冒薬や栄養ドリンク剤には、カフェインが入ったものが多く、若者に人気のレッドブル® にはコーラの約2倍弱、コーヒーほぼ1杯分に匹敵するカフェインが含まれています。
表1 食品中のカフェイン量
食品など | 1回量 | カフェイン量(mg) |
---|---|---|
コーヒー ドリップ式 | 150ml | 80-130 |
コーヒー レギュラー | 150ml | 60-130 |
コーヒー インスタント | 150ml | 50-70 |
コーヒー エスプレッソ | 25ml | 30-90 |
コーヒー カフェインレス | 150ml | 1.5-3 |
紅茶 | 150ml | 30-80 |
ココア | 150ml | 20 |
チョコレート | 100g | 20-60 |
コーラ | 340ml | 55 |
ダイエットコーラ | 340ml | 50 |
レッドブル® | 250ml | 80 |
お茶 玉露 | 150ml | 240 |
お茶 煎茶 | 150ml | 30 |
お茶 ほうじ茶・ウーロン茶 | 150ml | 40-50 |
お茶 番茶 | 150ml | 15 |
お茶 麦茶 | 150ml | 0 |
総合感冒薬 | 1錠 | 40-80 |
栄養ドリンク剤 | 1本 | 40-50 |
カフェインの覚醒作用
眠気を防止し、気分をすっきりさせ、一時的に集中力を高める作用が期待されています。カフェインの神経興奮作用は、脳の覚醒・興奮状態を抑える仕組みにブレーキをかけることによって生じます。カフェインの作用は、体調や人によって様々ですが、3~10時間(平均で約6時間)ほど続きます。喫煙者の場合、カフェインの作用は弱まります。
眠気の防止は、同時に入眠の妨げにもなります。午後に飲んだたった1杯のコーヒーで寝付けなくなる人も。睡眠障害のある人は、ベッドに入る数時間前からカフェイン入りの飲食品を摂らないことも有効な対処法の1つです。
女性とカフェイン
カフェインには血圧を上げる作用もあることから、女性に多い低血圧症に有効なこともあります。一方、カフェインの代謝は女性ホルモンの影響を受けることも分かっており、黄体期(排卵から生理の始まるまでの約2週間)や、ピルを服用している期間は、カフェインの効果が長くなります。また、カフェインは女性ホルモン(エストロゲン)の分泌を刺激するため、乳腺症の症状を強くすることがあります。
また、大量のカフェインは妊婦にも影響を与えます。妊娠中はカフェインの代謝が遅くなって体内に長く留まるため、カフェインの影響が出やすくなります。2003年のデンマークでの調査結果では、1日4杯以上のコーヒーで流産の危険が1.5倍に、8杯以上で2倍になります。さらに、カフェインは胎盤を通して胎児にも移行しますし、授乳婦では授乳中にも移行することが分かっています。妊娠中はコーヒーは1杯程度にするか、カフェインレスのものを試したほうが良さそうですね。
カフェインでドーピング?
カフェインが持つ薬理作用の1つとして、筋肉(骨格筋)の収縮を強め、疲労感の軽減や活動性の亢進感につながると考えられているものがあります。そのため、2004年までカフェインはスポーツ選手のドーピングの禁止薬物の1つに指定されていたほどです。
カフェインと体調の関係は?
● 頭痛
頭の血管の異常な拡がりによって起こるのが偏頭痛。カフェインには拡がった動脈を収縮させる作用があり、偏頭痛薬の代表だったエルゴタミン製剤のカフェルゴット® やクリアミンA® という製剤にも、薬の作用増強のためにカフェインが含まれています。
● 心臓
カフェインは心臓の収縮や脈拍数を増やし、心臓から送り出す血液の量を増やします。コーヒーの飲み過ぎにより、心臓の期外収縮(正常なリズム以外の心収縮)などの不整脈がみられることもあります。脈が速くなりやすい人や、頻拍性の不整脈がある人は、カフェインの摂り過ぎは要注意です。
● 利尿効果
カフェインには利尿効果があるため、コーヒーを飲むと何度もトイレに行きたくなることも。腎臓の血管を拡げて血流量を増やし、尿が多く作られるためです。
● 気管支喘息
カフェインは弱いながらも気管支の平滑筋を緩める作用があります。実際、茶葉から見付かった物質で、カフェインと同じ化学構造の骨格を持つテオフィリンは気管支喘息の治療薬として用いられています。
● 胃もたれ
カフェインは胃を刺激し、胃酸の分泌を増やします。そのため、空腹状態でコーヒーを何杯も飲んでいると、胃のもたれ、胃痛の原因になることがあります。
● 不安症状
不安障害やパニック障害を経験する人の場合、カフェインがその感受性を高め、不安症状を強くすることがあります。コーヒーやコーラの飲み過ぎに注意しましょう。
表2 カフェイン摂取の留意点
* 美味しいコーヒー、紅茶も1日3杯程度まで。
* 夕方以降のコーヒーは睡眠を妨げることあり。
* コーヒーの連日多飲で禁断頭痛も。
* 摂り過ぎは、動悸、指のふるえ、胃もたれの原因に。
* 栄養ドリンク剤、総合感冒薬、コーラ、緑茶にも含まれています。
* 不眠症、心臓の不整脈、パニック症候群の人は控えて。
* 生理のサイクルで作用時間が少し違ってきます。
薬との相互作用
胃薬の一部(シメチジン)や尿酸の治療薬(アロプリノール)はカフェインの代謝を抑えるため、カフェインの影響が出やすくなることがあります。また、カフェインは精神安定剤(ジアゼパム)の効果を弱めます。逆に、気管支喘息治療薬であるテオフィリンの副作用が強くなることがあります。
カフェインの禁断頭痛とは?
1日に3杯(カフェインで約400mg)以上のコーヒーを連日飲んでいると、コーヒーをやめて24時間ほどすると偏頭痛に似た痛みを経験することがあります。再びコーヒーを飲むと改善しますし、そのまま放おっておいても2~3日で自然に治ります。
カフェイン中毒って?
カフェインを多く含む飲料の多飲で起きる急性中毒と、長期にわたってカフェインを摂り続けることによって生ずる慢性中毒があります。急性中毒では、緊張・不安・落ち着きのなさ・不眠などの精神症状や、動悸・不整脈・吐き気などの身体症状を来たします。ちなみに、日本の薬局方では1錠500mg以上(コーヒー5杯程度に相当)のカフェイン製剤は劇薬指定になっています。
カフェイン効果の耐性
カフェインを連日摂り続けると1~2週間ほどで耐性(期待される効果が弱まること)を生じます。そのため、同じ眠気防止でも当初より多くの量が必要となってきます。
カフェインレスはカフェインなし?
コーヒーのカフェインレスの技術は今から100年ほど前にドイツで最初に開発されました。カフェインレス(Entkoffeinierung)またはデカフェは、カフェインが全くゼロではありませんが、カフェイン量はEU の基準で、コーヒー豆で0.1%以下、インスタントで0.3%以下とごく微量です。ドイツには、カフェインレスの紅茶や、日本製ではありませんがカフェイン含有量を減らした緑茶もあります。なお、普通のコーヒーとカフェインレスのコーヒーを比較した最近の研究によると、コーヒーを飲んで頭がすっきりするという感覚は、必ずしもカフェインの含有量によらず、コーヒーを飲むという心理的な影響も関係しているようです。
カフェインに注意が必要な人とは?
睡眠障害のある人、胃潰瘍のある人、不安感の強い人やパニック症候群では、カフェインは病状悪化を来すことがあります。また、肝臓の薬物代謝酵素を阻害する一部の治療薬との併用ではカフェインの代謝が遅れ、覚醒・興奮作用が出やすくなることがあるので注意が必要です。
それでは今日も美味しいコーヒーを味わってください。