ジャパンダイジェスト

老後への備え
高齢者用住宅の探し方 2

渡辺・レグナー 嘉子

「年を取ったら、近くに日本人がいる環境が良い、できる限り日本食を食べたい……」。こういったことが、ドイツ在住邦人の中高年たちの共通の希望でした。しかし、そうは言いながらも、誰も具体的な対策を立てることなく、そういう声が会員から出てから十数年が経っているグループもありました。またその間に、ひとり淋しく亡くなった方もありました。

DeJaK-友の会では、私たちに何ができるのか、具体的な情報を得るために市の住宅局(Wohnungsamt)へ質問に行きました。私たちが夢見ていたのは、日本でよく耳にする「グループホーム」。バリアフリーのアパート形式で、大きな居間兼食堂があり、朝ご飯以外の食事は希望すれば作ってもらえる。しかも、その建物の一角には一般向けの訪問介護の事務所があり、必要に応じてアパートの住人も介護サービスを提供してもらえる。このような形式のグループホーム「シャロームつきみ野(神奈川県大和市)」が14年前に開設されたときには、老人ホームに代わる、個人の生活を重視した新しいタイプの高齢者用集合住宅として、関係者から注目されました。

市の住宅局を訪れて分かったことは、ドイツでは様々な法規制が網の目のように張り巡らされていることです。それによると、まず介護サービスの事務所が同じ建物内に存在することは認められていません。また、市が助成する比較的安いアパート形式の1人用の部屋のサイズは約50㎡で、2人用なら70~90㎡が一般的であること。一方、日本の老人ホームの部屋の広さは平均、約18㎡。「余裕をもって普通のアパートのように」が売りのシャロームつきみ野は、1人用が40㎡、2人用で52㎡と広めの設定です。

老後そこで、その他のドイツの法規も守った上で、日本人とそのパートナーのための集合住宅の建設を実現できないかと、その後も住宅局が定期的に開く企画集会に参加することにしました。集会では、私たちのようなグループのプランについて、銀行や建築会社などの投資家に詳しく説明し、市がそれぞれのプランに合った土地候補を提案してくれます。すでに家を建てたグループが第2、第3のプランを持って相談に来ることもありました。

やがて、今の私たちのグループではまだ規模が小さ過ぎ、ドイツ式の集合住宅を建てるのは難しいということが分かってきました。しかし一方で、同じように高齢者用の集合住宅を計画しているグループが参加者を募っていることも分かり、高齢になっても社会参加や隣人との付き合いを積極的に続けようという彼らは、私たち日本人とそのパートナーが住人として参加することにも好意的で、早速、何か一緒にできることはないかと、話し合いが始まりました。

現在、このグループはホームを建築する土地や建築家が決まり、それぞれの部屋割りなどを話し合う段階で、今後は私たちのグループもそれに参加し、ともに活動をしていくことになりました。このプロジェクトが上手くいけば、次は日本人とそのパートナーの割合が多い集合住宅の計画を進めていけるように、現在一緒に活動しているグループがノウハウの提供などをしてくれることになっています。

どの都市にも同様の制度があり、グループホーム建設は可能です。住宅局に出掛けて情報収集し、あなたも地域の日本人とともに、グループホーム作りに参加してみませんか?

 DeJaK-友の会からのお知らせ 

デュッセルドルフ市における上記プロジェクトに興味のある方(市外の方でも)は、

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にご連絡ください。


大使館委託調査結果をまとめた冊子
『ドイツで送る老後』の説明会

4月11日(土)フランクフルト 14:30~
日本語普及センターにて
4月13日(月)シュトゥットガルト 15:00~
「まほろばの会」共催
※詳細はwww.dejak-tomonokai.deの「予定表」をご覧ください。

渡辺・レグナー 嘉子
在独邦人の高齢時の問題に積極的に関わっていくことを目指す「DeJaK-友の会」代表。著書に日本語教科書『Japanisch, bitte! 日本語でどうぞ』『ドイツ会話と暮らしのハンドブック』『Bildwörterbuch zur Einführung in die japanische Kultur』などがある。
DeJaK-友の会((www.dejak-tomonokai.de)

 
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熊谷徹
1959年東京生まれ、早稲田大学政経学部卒業後、NHKに入局。神戸放送局、報道局国際部、ワシントン特派員を経て、1990年からフリージャーナリストとしてドイツ在住。主な著書に『なぜメルケルは「転向」したのか―ドイツ原子力四〇年戦争』ほか多数。
www.facebook.com/toru.kumagai.92
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