旧東ベルリンの高架下で飲む樽熟成ビール
今年はベルリンの壁崩壊(1989年)から30年の記念すべき年を迎え、そして来年は、ドイツ再統一30周年となる。街が2つに分断されるという奇妙な歴史を持つベルリン。再統一後、社会主義を象徴する建物は次々と取り壊されてしまったが、街を歩いているとそこかしこで東ドイツ時代の面影に遭遇できる。
大まかに言うと、ブランデンブルク門より東側の地区が旧東ドイツ。ベルリン大聖堂や博物館島など歴史を感じる建築物がある一方、整然と並ぶ無機質な建物やテレビ塔、ベルナウアー通りに記念碑として残された2重の壁と監視塔などは旧東ドイツの名残だ。
複数のアパートと中庭が迷路のように連なっているハッケシェ・ヘーフェ(Hackesche Höfe)もベルリンならではの場所。建物は1900年代初頭に建てられ、再統一後はほかの地域より家賃が安かったことから若者やアーティストが集まり、トレンドの発信地になった。古いものも新しいものも飲み込み、進化を続けるベルリンの躍動感が感じられる。
「Brauhaus Lemke」は、そんなベルリンの新しいビール文化を牽引してきた醸造所。ハッケシェ・ヘーフェから徒歩5分ほどのS バーンの高架下に、醸造所と付属のレストランがある。ここはベルリンで最も古いクラフトビール醸造所で、レンガ造りの外壁とアーチのある天井がインダストリアルな雰囲気。設立者のオリバー・レムケ氏は世界各地で醸造所の建造を手伝った後、20年前に手作りでこの醸造所を立ち上げた。ビールはドイツ伝統のものから、外国のスタイルまでとさまざまで、数々のビアコンペティションで賞を獲得している。
「IMPERIAL STOUT」はフランス産のオーク樽で6カ月熟成させたスタウトで、ウイスキーのような樽香とカカオやバニラのようなリッチな風味が楽しめる。歳月は、街もビールも面白くしてくれるようだ。