北の港街ハンブルクでパリムパリム
中世から貿易拠点として栄えたドイツ第二の都市ハンブルクで、エルベ川周辺の都市開発が進んでいる。2001年から始まった都市開発は現在も進行中で、街の快適性や環境面を追求した「持続可能な街づくり」が最重要テーマだ。エルプフィルハーモニーやマルコ・ポーロ・タワーなど、古くからの景観や環境と一体化した街を散歩するのは大変面白い。
クラフトビールも進化中。なかでもフィッシュマルクトの一角にあるウーバークヴェル醸造所は、流行のクラフトビールをそのまま真似するのではなく、ドイツらしく咀嚼(そしゃく)して表現している。醸造所は古い倉庫を改装し、レストランとテラスを併設。古い赤レンガの壁や高い天井を生かしつつ、外壁や醸造タンクは地元のアーティストによりビビットに装飾され、独特の雰囲気をつくり上げている。また、市内の倉庫の屋上に都市型農業「グリーンパウリ」を開設し、緑地保全や子どもたちへの食育の場を提供しているという。
「Palim Palim Pale Ale」は英国発祥のペールエールと呼ばれるスタイルのビール。本来はペールエールに使用されない小麦麦芽を加えることで、よりフルーティーに仕上げている。グラスに鼻を近づけるとリンゴの蜜のような香りが漂う。苦味はオレンジの皮のようで、キャラメルのような麦芽の甘みとのバランスが良く、豊かな味わいが特徴。
「Palim Palim」とは、ドイツのドアベルの擬音語で、日本語でいう「カランコロン」。コメディアンが使用したことでドイツ中に広まったそう。昔ながらの小さな個人商店にはドアベルが付いており、この音を鳴らして店に入り、小間物を買ったのだとか。街にスーパーマーケットが増えてこの音を聞く機会が少なくなった今、ドイツの人たちの郷愁を誘う音だろう。新しいものと古いものが混在するハンブルクを代表する、新しいけれど懐かしさも感じさせるビールだ。