メルヘン街道の先にあったのは世界のマーケット
ハンザ同盟都市として中世にはハンブルクに次ぐ港町として栄えたブレーメン。その繁栄を物語る美しい建物が数多く残り、中でもゴシック様式とルネサンス様式の調和が見事な市庁舎と、自由と独立の象徴であるローラント像は、ユネスコの世界文化遺産に登録されている。
グリム童話ゆかりの地を結ぶメルヘン街道の終着地は、市庁舎脇にある「ブレーメンの音楽隊」の像である。童話の中で音楽隊になるべくブレーメンに向かった4匹の動物たちだが、途中泥棒たちから奪った家に安住してしまうので街に到達していない。しかしブレーメンに「出稼ぎ」に来ていたかもしれないと考えると面白い。音楽隊をイメージしたユニークなモニュメントやお土産店がそこかしこに見付けられる。ブレーメンは彼らが夢見たとおり明るく活発な街なのだ。
街のもう一つの名物、ベックスの前身となる醸造所Kaiserbrauerei Beck&May o.H.G.は、醸造家のハインリヒ・ベック(Heinrich Beck)らが1873年に創業。創業から2年で世界博覧会でゴールドメダルを獲得するなどブレーメンを代表する醸造所であったが、経営者も社名も次々と変わり、2002年にはベルギーのインターブリューによって買収される。インターブリューは2004年にブラジルのアンベブと合併しインベブに。2008年にはバドワイザーで知られる米アンハイザー・ブッシュを買収し、アンハイザー・ブッシュ・インベブ(Anheuser-Busch InBev)として業界最大手に。さらに2016年に業界2位の英国SABミラーを買収し、ビール飲料の世界シェア3割を占めるまでになった。バイエルンのシュパーテン・フランチスカーナもこの傘下だ。巨大な販路を得たベックスは世界90カ国以上で飲まれるドイツを代表する銘柄に飛躍した。
ホップの爽快な苦みと炭酸がしっかりと感じられる。カラカラに乾いた喉にゴクゴクと流し込みたくなるビールだ。