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旅ールのすすめ - ビールに会いに旅に出よう

山片 重嘉コウゴ アヤコ 1978年東京生まれ。杏林大学保健学部卒業。ビール好きが高じて2008年から1年半、ミュンヘンで暮らす。旅とビールを組み合わせた“旅ール(タビール)をライフワークに世界各国の醸造所や酒場を旅する。ビアジャーナリストとして『ビール王国』(ワイン王国)、『ビールの図鑑』(マイナビ)、『Coralway』(日本トランスオーシャン機内誌)など、さまざまなメディアで執筆。 www.jbja.jp/archives/author/kogo

僧侶の街ミュンヘンで、強いビールのお祭り開催中!

春が待ち遠しいこの季節、ミュンヘンではパウラナー醸造所併設の巨大なホール「Paulaner-Nockherberg」で「Starkbierfest(強いビールの祭り)」が開催される。2019年の今年は3月15日から4月6日までだ。

オクトーバーフェストのようににぎやかなビールの祭りだが、ここで飲まれるビールはアルコール度数が強いドッペルボック。カラメルのような香ばしさと複雑な甘みが心地よい。熱気に包まれたホールで、音楽に合わせてガブガブと強いビールを飲んでいたら、すぐに酔いが回り愉快な気分になる。しかし本来、このビールはキリスト教の断食期間に修道士が飲む「液体のパン」だった。

中世の頃、カトリックの重要な祭日である復活祭までの四旬節に固形物を口にしない断食の習慣があった。まだ寒い季節、石造りの修道院での断食は辛かったことだろう。しかし「液体」の摂取なら許されていた。そこで栄養が摂れるよう麦芽のエキス濃度を高め、アルコール度数も高いドッペルボックが「液体のパン」として飲まれるようになったのだ。

修道士たちの栄養源だったこのビールは、1780年にパウロの聖フランシスコ会(パウラナー)によって一般にも販売された。ラテン語で救世主を意味する「Salvator(サルバトール)」と名付けられたこのビールはたちまち人気に火が付き、ほかの醸造所でもこれに倣い「~ator」の名を付けたドッペルボックが造られるようになった。

ミュンヘン(München)の街の名前は修道士(Mönch)に由来する。10世紀ごろにベネディクト派の修道士らがイザール河畔に集落をつくったことから「修道士の住む場所の近く(bei den Mönchen)」が語源といわれている。

ミュンヘンの市章は、聖書を手にした子どもの僧侶だ。私たちも修道士が愛した強いビールを飲んで、愉快にそして温かく春を迎えたい。

vol.27
Salvator

Salvator

 
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