ジャパンダイジェスト

EU市民に対するハルツ4給付拒否に合法判決
欧州裁、「受給には職探しが前提」

ルクセンブルクの欧州裁判所(EuGH)は11日、ドイツ国内で失業中の欧州連合(EU)加盟国出身者に対し、就職活動をしていない場合は生活保護を給付できないとする判断は合法との判決を下した。ヴェルト紙が伝えた。

同判決は、ライプツィヒ在住のルーマニア人女性(25)が起こした訴えに対して下されたもので、この女性は2010年以降、息子とともに同市内にいる自身の姉妹の元に身を寄せており、これまで一度も就業したことがなく、また職業訓練を受けたこともない状態だったという。この女性が長期失業者向け生活保護ハルツ4の申請を行ったところ、同市の就職斡旋所はこれを却下。同件は社会裁判所から欧州裁判所に回され、判断が仰がれた。

連邦政府は同判決に対し、歓迎の意を表明。政府のエツォグツ移民問題担当官(社会民主党=SPD)は、「この判決により、就職斡旋所が明確な論拠を得られたことは良かった」と言明した上で、「個々の事例に対する細心の配慮が必要で、厳しい審査を設けることで誰かが損害を被ることがあってはならない」とも述べた。

 

ケルンで大規模な反イスラム・デモ
警察官49人が負傷、参加者17人逮捕

10月26日、ケルンでフーリガンやネオナチによる大規模な「イスラム過激派サラフィスト排斥」を掲げるデモが行われ、警察が放水や催涙ガスで応戦するほどの騒乱に発展した。ヴェルト紙が伝えた。

このデモは、イスラム過激派サラフィストに対する「反サラフィスト・フーリガン同盟」によって行われ、ネオナチ・グループや極右政党Pro NRWの支持者らも合わせて計4800人が参加した。彼らはケルン中央駅北側に集結。ヒトラー式の敬礼が見られたり、爆音花火が飛び交うなど、デモ開始当初から現場は暴力的な雰囲気に包まれた。彼らは「外国人は出て行け」などと叫びながらケルン市内を行進。この事態を受け、地元警察は1000人の警官を導入。デモ隊の投石や爆音花火などの攻撃に対して放水や催涙ガスで応戦した。この日、49人の警察官が負傷し、デモ参加者のうち17人が逮捕された。

今回の大規模デモを受け、ノルトライン=ヴェストファーレン(NRW)州のイェーガー内相(社会民主党=SPD)は「ケルンはドイツで初めてフーリガンによる暴力集会を許してしまった。これは、集会の自由を悪用した暴力行為にほかならない」とコメント。NRW州では将来的に、こういったフーリガンのデモを禁止する方向で、捜査を行っていくとしている。マース連邦法相(同)は、「このような暴力行為をドイツの都市で行う者には、あらゆる法的手段を用いて罰則を与えるべきだ」と述べ、このような事態を受けてイスラム過激派サラフィストと極右勢力の暴力性が激化することへの懸念を表明した。

一方、デメジエール連邦内相(キリスト教民主同盟=CDU)は、公共放送ARDのニュース番組「ターゲステーメン」で、「司法の明確なあり方」の重要性を強調。フーリガンのデモを取り締まる上で新たな法律は必要ないとして、「暴力行為に対して明確な態度を取ることで、このようなデモを禁止することができる」と述べた。

「フーリガン」とは、暴力的なサッカーファンのことを意味するが、今回のデモはサッカーとは関係がなく、ドイツには1980年代からフーリガンと極右思想を結び付けたネオナチ・グループが存在している。

 

ベルリンの壁崩壊から25周年
「自由への勇気」を掲げ、記念式典開催

ベルリンの壁崩壊から25周年を迎えた11月9日、首都ベルリンでは盛大な記念式典とイベントが開催された。

ベルナウアー通りのベルリンの壁記念碑前での式典に臨んだメルケル首相(キリスト教民主同盟=CDU)は、現在のウクライナやシリア、イラク情勢に対して、「壁崩壊という歴史的事実が伝えているものは、物事を良い方向に変化させることができるというメッセージだ」「独裁という壁、暴力という壁、イデオロギーという壁、敵意という壁が崩されなければならない」として、「壁崩壊は、夢が叶うということを私たちに示した」と演説した。

さらに、ブランデンブルク門前で「自由への勇気」をモットーに開催された祝賀イベントでは、ウド・リンデンベルクなどの著名なアーティストが出演。集まった数十万人が、ベルリンの壁を越えようとして亡くなった136人の犠牲者を悼み、黙とうする時間が持たれた。また、同イベントに合わせてベルリンの壁跡には7000個の光の風船のインスタレーションが設置され、その1つ目がベルリンのヴォーヴェライト市長によって「平和と自由のために」という掛け声とともに空に放たれた。

同日午後にはジャンダルメンマルクトに建つコンツェルトハウスで、東西ドイツ統一の功労者の1人とされるミハイル・ゴルバチョフ元ソ連書記長とレフ・ワレサ元ポーランド大統領が盛大な拍手で迎えられた。ヴォーヴェライト市長は開会の辞で、「東ドイツが不法国家であったことに疑いの余地はない」と述べ、さらに1938年の11月9日がナチス政権下で「水晶の夜」として知られる反ユダヤ主義暴動があった日であることにも言及。「憎しみと暴力を許してはならない」と強調した。また、「ベルリンは将来も変化し続けるだろう。新しいものを受け入れる開かれた姿勢がベルリンの活力源だ」と述べた。

一方、旧東ドイツ政権政党の後継政党である左派党のキッピング党首は、東ドイツの「不法性」を認める一方で、25年前に自由を求めて路上に出て行った多くの東ドイツ市民の希望はまだ叶えられていないとして、「民主主義と自由、社会主義を実現するために、やらなければならないことはたくさんある」と主張した。

 

コール元首相の暴露本に改訂命令
ほかの政治家を批判した内容について

ケルン地方裁判所は13日、コール元首相(キリスト教民主同盟=CDU)の回想録執筆を担当したゴーストライターが630時間に及ぶインタビュー内容を元首相の許可なく別途出版した件で、複数個所の改訂を命じる判決を下した。

問題となっているのは、ヘリベルト・シュヴァーン氏による『遺産―コールの記録(Vermächtnis – Die Kohl-Protokolle)』。コール元首相は、ほかの政治家を激しい表現を用いて批判していた内容115カ所について削除を求めていた。コール元首相は同書出版に先立ち、出版差し止めを求めていたが、裁判所はこれを却下。すでに出版された在庫分については、販売を認めるとしている。

 

アルカンドル元社長に懲役3年
背任と脱税の罪で

エッセン地方裁判所は14日、経営破たんしたアルカンドルのトーマス・ミッデルホフ元社長に対し、背任と脱税の罪で懲役3年の判決を下した。ヴェルト紙が伝えた。

同社は百貨店大手カールシュタットの元親会社で、2009年に破産申請を行った。検察局はミッデルホフ元社長を、任期中にプライベート旅行のチャーター便やヘリコプターを会社払いで使用していたことなど、27件の背任罪と脱税容疑で起訴。6カ月に及ぶ公判を経て有罪判決が確定した。ミッデルホフ元社長が会社に与えた損害は50万ユーロに上るとみられている。裁判官は逃亡の可能性を認め、ミッデルホフ元社長は判決直後に即刻逮捕された。

 

DBとルフトハンザ労組が国内全域で交互にスト
交通網の混乱相次ぐ

ドイチェ・バーン(DB)の機関士労組GDLと国内航空最大手ルフトハンザの操縦士労組が交互にストライキを実施し、国内で交通機関の混乱状態が頻発している。10月21日付のヴェルト紙などが伝えた。

GDLは5%の賃上げを要求しているが、DB側と折り合いが付かず、10月中2回にわたってドイツ全土でストを決行。一方、ルフトハンザおよび子会社のジャーマンウイングスの操縦士労組コックピットは、操縦士の55歳からの早期年金制の継続を求めている。GDLが10月18日からの週末に掛けて実施した50時間に及ぶストは、国内7州が秋休みに入った時期と重なり、DBの発表によると、運行したのは長距離列車3分の1のみ。

これを受け、メルケル首相(キリスト教民主同盟=CDU)が特定の状況下で労組側に賃金協定への同意を促す賃金協定法の導入意義を強調。ナーレス労相(社会民主党=SPD)は来年半ばから労組に雇用者側への協力を要請する新法導入の方針を発表した。多数の小規模労組からは「政治的裏切りだ」として労相を批判する声も上がっている。

 

反脱税協定に51カ国が署名
各国間で口座情報などを共有へ

各国間で銀行口座などの情報を共有する反脱税協定が10月29日、ベルリンで締結され、51カ国が署名した。

同協定は、外国に隠し口座を作って脱税を行うことを防ぐためのもの。2017年秋以降、個人が外国に所有する口座情報が各国間で共有されることになる。17年時点で58カ国が同協定に加盟、翌年からはさらに34カ国が加わる見通しで、協定加盟国の銀行および金融機関は情報共有を義務付けられることになる。協定締結を受けてショイブレ財相(キリスト教民主同盟=CDU)は、「これにより、脱税は徒労に終わることになるだろう」と言明。「同協定は透明性と公正さを実現できる」と強調した。

 

デジタル化で子どもの将来を心配
労働市場の変化が就職事情に影響?

アレンスバッハ研究所が10月31日発表した調査で、デジタル化による急速な労働市場の変化を受け、自分の子どもの将来を心配している親が多いことが明らかになった。

学齢期の子どもを持つ親1100人を対象に行われた調査で、3分の2が将来、より多くの仕事がデジタル化または機械化されると予測。約半数が、就労事情が不安定になると回答した。また、単純労働の減少によって子どもの就職機会が奪われることを懸念する親が、特に社会的弱者とされる層に多いことも明らかになった。さらに、コンピューターやインターネットに関する知識が言語能力や外国語の知識より就職に有利であるとの意見が大多数を占めた。

 

NRW州の難民収容施設で警備員が暴力
民間企業への業務委託に批判も

国内複数メディアが、ノルトライン=ヴェストファーレン(NRW)州の難民収容施設で、警備員が住人に暴力をふるうなどの虐待を行っていると報道したことを受け、連邦政府はNRW州に対して徹底的な事実解明を要請した。9月30日付のヴェルト紙が伝えた。

問題となっているのは、民間企業のヨーロピアン・ホームケア(EHC)社が経営する難民収容施設で、ここで警備員から難民申請者に対して虐待が行われたと報じられている。NRW州ハーゲン警察の特別捜査班は6人の警備員に対し、傷害の疑いで事情聴取を行ったほか、100人の難民収容施設住人にも聞き込み調査を実施している。容疑者とみられる警備員の中には前科者も含まれているという。

最も暴力被害が多かったとされるのはブルバッハの施設で、その他、バート・ベルレスベルクとジーガーラントとエッセンでも警備員による暴力行為があった事実が明るみに出ている。アフリカ出身の庇護申請者の1人は公共放送WDRの取材に対して、「我々は、まるで何の権利もない人間のように扱われた。ここは難民収容施設ではなく刑務所のようだ」と現状を訴えている。

今回の事態を受けてNRW州のクラフト首相(社会民主党=SPD)は「言葉を失っている。どうしてそのようなことが人間としてできるのか、恥ずかしく思う」とコメント。一方、EHCの経営者は「驚いていると同時にショックを受けている」と述べている。また、ドイツ警察労組(DPolG)は「ぞっとするような異常な出来事」「難民収容施設のような、本来行政が担うべき任務を、安易に民間に委託してきた結果だ」と述べ、政府の姿勢を厳しく非難している。今年1年でドイツにやって来る庇護申請者の数は20万人に上るとみられており、急増する難民への対応は政府にとっての懸案事項となっている。

EHCは、1989年に難民収容施設の経営を担う民間企業として設立された会社。政府の委託を受け、国内40カ所の施設を運営している。今回問題となったNRW州内には同社経営の難民収容施設が6カ所あり、EHC独自の管理人、調理スタッフ、ソーシャルワーカー、医療スタッフを置いているが、警備員は外部に委託している。

 

バーデン=ヴュルテンベルク州で建築条例改正
駐輪場や「緑化」の義務などに疑問の声も

バーデン=ヴュルテンベルク州で建築条例の改正が計画されているが、その内容に疑問を呈する声が上がっている。8日付のヴェルト紙が伝えた。

改正案では、住居建物を新築する際に1軒につき屋根付き駐輪場を2カ所設置することや、庭スペースが住居にない場合は建物のファサードや屋根部分にツタなどの植物を生やして「緑化」に努めることなどを建築主に義務付ける内容を盛り込んでいる。また、現在4軒につき1軒となっているバリアフリー住宅を、将来的に3分の1にまで増やすことも目指している。これに対して同州不動産業連盟からは、多くの内容が不明瞭との声が上がっている。

 

「税金の無駄遣い」事業が増加
納税者連盟が指摘

納税者連盟(BdSt)が7日、最新の「税金無駄遣い」リストを発表し、予算をはるかに上回った公共事業や、自治体による無計画なプロジェクトの問題点を指摘した。

BdStは、無計画な経済の活性化によって多額の公的資金が無駄に使われるケースが増えていると指摘。ハンブルクでは、2万5000ユーロの予算で計画されたホームレスのための公衆トイレに3万2000ユーロを費やしたにもかかわらず、結局当初の目的通りに活用されていないことや、90万ユーロの予算で計画されたシュトゥットガルトの屋外スケートリンクが近隣住民の抗議に遭い、継続使用のために170万ユーロを要したことなどが挙げられている。

 

国防相が紛争地域への新たな連邦軍派遣を検討
SPDからは「攻撃姿勢」に批判も

フォン・デア・ライエン国防相(キリスト教民主同盟=CDU)が5日、イラク北部やウクライナなどの紛争地域に、新たに連邦軍を派遣する計画を発表した。これに対し、連立パートナーの社会民主党(SPD)からは非難の声が上がっている。ヴェルト紙が伝えた。

政府はすでにイラク北部のクルド人勢力に武器輸送を行っているが、これに合わせてイラクのエルビルに13人の連邦軍兵士が、武器使用の指導などのために派遣されている。さらに同国内ではイスラム過激派組織イスラム国に対抗するため、8~12カ所の軍事教育施設の建設が予定されており、うち1施設の建設をドイツが請け負うことになる。さらに国防相は、ロシア国境に近いウクライナ東部に平和監視のための偵察機を配備するとしているが、ここに武装兵が派遣されるかどうかは未定。

国内では連邦軍の装備不足が危ぶまれており、SPDからは国防相の攻撃的姿勢を批判する声が上がっている。最新の世論調査ドイチュラントトレンドによると、国防相の人気が低迷気味で、61%が「不適任である」と答えている。

 

イスラム過激派がドイツ人を人質に
フィリピンでドイツ人2人を誘拐

フィリピンで、イスラム過激派組織アルカイダに近いとされるグループがドイツ人2人を人質に取り、連邦政府に脅しを掛けている。アブサヤフと名乗るこのグループは、イラクとシリアにおける米国の軍事攻撃への協力を連邦政府が止めなければ、人質を殺すとの声明を発表している。9月25日付のヴェルト紙が伝えた。

アブサヤフに誘拐された2人のドイツ人は、74歳の男性と55歳の女性。4月にヨットでフィリピン本島とボルネオ島を航行中に、同グループに拉致された。アブサヤフはさらに、560万ドルの身代金を要求しているという。

連邦政府は、イラクおよびシリアにおける米国の空爆に直接は加担していないが、イスラム過激派組織イスラム国(IS)と敵対するイラク北部のクルド人勢力に武器提供を行っている。さらに、武器輸送に合わせてフォン・デア・ライエン国防相(キリスト教民主同盟=CDU)がイラクを訪問。紛争地域を訪れ、現地で武器輸送の対応に当たっている連邦軍兵士を見舞った。国防相はイラク北部でクルド人自治区の代表らと会合し、「イスラム国と戦っているクルド人に敬意を感じる」と述べた。

今回のアブサヤフの脅迫についてシュタインマイヤー外相(社会民主党=SPD)は、詳細に関するコメントを避けつつも、「我々の対シリア、イラク政策に対して、脅しは有効な手段ではない」と言明。また、外相は今回の米国のISに対する空爆について、国連憲章に記されている「自衛権」の範囲内に相当するとの見解を示している。

一方、アルジェリアではイスラム過激派に誘拐されたフランス人旅行者が殺害され、犯行に及んだ「カリフの兵士」が殺害の様子をビデオで公開するという事件が起こっている。このグループはフランス政府に対して、イラクでのISに対する軍事攻撃から手を引くことを要求していた。これらの事態を受けて、米国を中心とする軍事連合は、これらの圧力には屈せず、イスラム過激派勢力への攻撃を継続することを表明している。

アブサヤフは2000年にも、フィリピンでドイツ人家族3人を含む20人の外国人旅行者およびホテル従業員を人質に取り、人質解放まで3カ月の時間を要している。

 

エボラ対策で医療スタッフを西アフリカに派遣
連邦軍からも兵士ら2000人が志願

連邦政府は9月25日、エボラ出血熱が流行している西アフリカに対する支援を強化する方針を打ち出した。

グレーエ保健相(キリスト教民主同盟=CDU)はドイツ赤十字、ドイツ医師連盟と共同で、現地に赴任できる医療スタッフを募集。西アフリカ地域では現在までに、エボラ出血熱により3000人が死亡しており、赤十字は現地でのエボラ出血熱患者対応の病院増設を計画。シエラレオネに100人収容可能の施設と、リベリアに200人収容可能な移動医療施設を予定しているが、ここに170~180人の医療スタッフが必要とされている。募集対象は医師、看護士のほか、助産婦、理学療法士、専門技師などで、専門能力と経験に加え、英語力が求められている。現地での勤務は4~6週間での交代制を予定。赴任に際してはドイツ赤十字による特別研修を受けることになる。

一方、保健相の呼び掛けに先立ち、フォン・デア・ライエン国防相(CDU)が連邦軍に対して西アフリカ支援の人材を募ったところ、これまでに2000人以上の連邦軍兵士、予備役、文官が応募しているという。

 

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