ベルリンには動物園が東西にそれぞれ1つずつある。西側のツォーは家族が年間パスを持っているほど馴染みの場所だが、東側のティアパーク(動物公園)は自宅から遠いこともあり、これまでなかなか縁がなかった。
復活祭前の聖金曜日、抜けるような青空の日に家族で出かけてみることにした。地下鉄U7のヘルマンプラッツ駅から194番のバスに乗る。旧西側から旧東側に入ると、かつての壁沿いに植えられた桜が満開を迎えているのが目に入った。シュプレー川を越えて住宅街に入り、30分ほどで最寄りのバス停に到着した。休日でこの天気となれば、大混雑に違いないと予想していたのだが、チケット売り場の列はそれほどではなかった。そして敷地内に入っても、さほど混雑した印象を受けない。後でこの動物園の面積を知って納得した。西のツォーが33ヘクタールなのに対して、ティアパークは160ヘクタール。「欧州最大規模の動物園」と言われるだけのことはある。
第二次世界大戦後の東西ベルリンの分割により、ツォーは西側の英国占領地区に属し、東側は動物園を欠くことになる。ティアパークはその過程で生まれることになった。1955年にヴィルヘルム・ピーク大統領列席のもとオープンを迎えた。
中に入ると瀟洒(しょうしゃ)な宮殿が目に入る。17世紀末に建てられたフリードリヒスフェルデ宮殿だ。ティアパークはこの宮殿と広大なバロック庭園の敷地を生かして造られた。西のツォーのように動物の原産地を意識した立派な建物はないものの、さまざまな動物がより自然にそこにいる感覚。奥にあるゾウとキリンの敷地では、一瞬アフリカの大地にいるような錯覚を覚えた。
園内にあるフリードリヒスフェルデ宮殿
子どもがひしめく水の遊び場や名物の鳥のショーなどを楽しんで、シロクマを見に行った。大きな飼育場は一際大きな歓声と熱気に包まれている。昨年12月に生まれたメスの赤ちゃん「ヘルタ」の一般公開が、3月半ばに始まったばかりなのだった。ヘルタは、池に浮かぶ赤いボールが気になって仕方がない様子。しかし、わずかに手が届かない。お母さんグマの「トーニャ」に見守られながら、小さな手を動かす仕草は何とも愛らしい。
2018年12月1日に生まれたシロクマ(ホッキョクグマ)のヘルタ
人々が夢中になっている様子を見ながら、2007年に、当時一大ブームになったクヌートを初めてツォーで見たときのことを鮮明に思い出した。その4年後、クヌートが悲劇的な最期を迎えた後、ベルリンの動物園はなかなかシロクマの後継に恵まれなかった。2016年11月、トーニャはオスの赤ちゃんを出産し、公募で「フリッツ」と名付けられたが、4カ月後に突然息を引き取った。翌17年12月に生まれた赤ちゃんはわずか26日の命だった。動物園関係者は「喜びがいかに早く過ぎ去るかを身に染みて感じた」と語っていただけに、ヘルタのここまでの成長ぶりにまずは安堵していることだろう。
そろそろ後にしようと思ったとき、「キャー」という観客の悲鳴が聞こえた。はっと振り返ると、ボールに手を伸ばしたヘルタが池に落ちてしまったのだった。が、さすがはシロクマだけあって器用に泳いでいる。その様子をトーニャは穏やかに見守っていた。
ティアパーク・ベルリン
Tierpark Berlin
フリードリヒスフェルデ地区にある動物園。広大な敷地に790種類もの動物が生息する。園内の移動には、40分ごとに走るSL型の無料の電気バスも便利。西側の動物園やアクアリウムの年間パス所持者は、チケットが半額になる。最寄りはU5のTierpark駅。ちなみに、ヘルタのスポンサーは、プロサッカーチーム「ヘルタ・ベルリン」。
オープン:4〜9月 9:00〜18:30(季節により変動あり)
住所:Am Tierpark 125, 10319 Berlin
電話番号:030-515310
URL:www.tierpark-berlin.de
ツォー・ベルリン
Zoo Berlin
西側の中心部に位置するベルリン動物園は、すぐに動物たちに会いに行けるのが大きな魅力。ただし、休日は混雑することも多く、チケット売り場に長蛇の列ができることも。こちらのシロクマの飼育場には、現在のところ34歳のカチューシャだけが残っている。メスのカチューシャは、動物園で生息するシロクマでは世界最高齢といわれる。
オープン:4〜9月 9:00〜18:30(季節により変動あり)
住所:Hardenbergplatz 8, 10787 Berlin
電話番号:030-254010
URL:www.zoo-berlin.de