真っ白の列柱が奥へと建ち並ぶ様は、古代ギリシャの壮麗な神殿を思わせる。一方、工事の遅延と建設費の高騰から「世界で最も高価なクローク(携帯品預り所)」と何度メディアや市民から揶揄されたことだろう……。
7月12日にオープンした博物館島のジェームス・ジモン・ギャラリー
7月12日、世界遺産の博物館島に、総合エントランスホール「ジェームス・ジモン・ギャラリー」が、メルケル首相臨席のもとついにオープンした。初めて一般公開された翌13日、足を運んでみた。
ドイツ再統一後、5つの美術館・博物館群が並ぶ博物館島をどのように再編するかは、ドイツの文化政策における焦点の1つだった(第二次世界大戦から続く影響により、1990年代当時、開館していたのは旧博物館とペルガモン博物館だけだった)。その際浮かび上がったのが、博物館島に総合エントランスホールを造り、地下の通路で各ミュージアムを結びつけるというもの。パリのルーブル美術館をモデルに、博物館島を1つの有機体として再生させる案が提示されたのである。
1999年にその案が決定されたものの、そこから長い道のりが始まる。2001年に英国の建築家デイヴィッド・チッパーフィールドが最初の下絵を発表したが、不評の声を受けて、改訂を余儀なくされた。2009年に工事が始まってからも、地盤の弱さに作業は難航し、建設費用は当初の7100万ユーロから1億3400万ユーロに膨れ上がったのだった。完成したホールには、博物館島の発展における重要なパトロンだったジェームス・ジモン(1851〜1932)の名前が冠された。
いろいろあったとはいえ、生まれたての建築の中に入るときは、やはり気分がわくわくする。広々とした屋外階段を上がると、正面が入口。左に進むとテラスがあり、川の対岸方面への気持ちのいい眺望が待っている。そこには博物館の開館時間以外も営業するカフェが併設されており、早速にぎわいを見せていた。
ペルガモン博物館への新しい入口
ホワイエの先に進み左に曲がると、そこにペルガモン博物館の入口があった。その場にいた係の女性に聞いてみると、ペルガモン博物館へは今後ここが唯一の入口になるとのこと。あの堂々たる正面玄関からはもう入れないのかと思うと、少し寂しい気もした。
再び中央に戻って階段を下ると、中2階に大きなショップ、クローク、トイレなどがある。その下の地上階にはオーディトリウムと呼ばれる大きなホールの入口があり、そこで講演会や各種行事が行われるそうだ。
地上階からはさらに地下へと続く階段がある。これがいわゆるArchäologische Promenade(考古学プロムナード)と呼ばれる地下通路の入口。そこからは、やはりチッパーフィールドが再建を手がけた新博物館へ続き、将来的には旧ナショナルギャラリーを除く4つのミュージアムが地下で結ばれることになる。
プロイセン文化財団総裁のヘルマン・パルツィンガーは、「戦争と壁が引き裂いた、コレクション再編の作業はまだ終わっていない」と語る。まだ長い道のりが待っているが、博物館島はようやく新時代への「入口」を手にした。
ジェームス・ジモン・ギャラリー
James-Simon-Galerie
博物館島の総合エントランスホールとして、あらゆる情報をここで得ることができる。建物名の由来となったジェームス・ジモンはユダヤ系の著名な企業家、芸術パトロン。なかでもドイツ人調査隊によるメソポタミアとエジプトの発掘作業を支援し、1920年にネフェルティティの胸像をベルリン博物館に寄贈したことで知られる。
オープン:月曜〜日曜9:30〜18:30
住所:Bodestraße, 10178 Berlin
電話番号:030-266424242
URL: www.smb.museum
フンボルト・フォーラム
Humboldt Forum
ジェームス・ジモン・ギャラリーがオープンし、次に注目されるのが博物館島の向かい側にあるフンボルト・フォーラム(旧ベルリン王宮)。当初はアレクサンダー・フンボルト生誕250年の今年9月にオープニング式典が行われる予定だったが、技術的な問題から2020年9月に延期されたばかり。2021年にかけて数段階に分けてオープンする予定だというが、果たして。
住所:Schloßplatz 7, 10178 Berlin
電話番号:030-265950521
URL:www.homboldtforum.org