2~3年前からだろうか、ベルリンのコンサートホールや劇場に置いてあるフライヤーのスタンドで、「ベルナウのバウハウス世界遺産」と書かれたシックなパンフレットをよく目にするようになった。バウハウスといえばワイマールやデッサウが有名だが、ベルリン近郊のベルナウはあまり知られていない。考えてみたら、私はまだベルナウに行ったことさえなかった。天気のいい3月の週末、ずっと気になっていたこの場所に家族で出かけてみることにした。
ベルナウのバウハウス世界遺産のビジターセンター
ベルリンの北東に位置するベルナウはそれなりに遠いイメージがあったが、ゲズントブルンネン駅からRE3に乗ると、わずか13分でベルナウ駅に到着した。ここはもうブランデンブルク州で、公共交通はCゾーンになる。駅前からバスに乗り、しばらく走ると車窓に緑が広がる。「バウハウス世界遺産」で下車し、並木道を5分ほど歩くと、ガラス張りの真新しいビジターセンターが見えてきた。私たちは11時半からのガイドツアーを予約していた。
ガイドさんがADGB-Bundesschule(全ドイツ労働組合総連合の連邦学校)という、日本語にすると長い学校の由来を説明してくれる。第一次世界大戦後、労働組合の職員の研修とレクリエーションの施設をベルナウに作る構想が生まれた。1924年に創業した最初の都市鉄道(Sバーン)の終点がベルナウだったことも大きかったという。後にバウハウスの第2代校長となるハンネス・マイヤーとハンス・ヴィットヴェアの設計により1930年に完成した。
学校のメインの建物は、アルファベットのZを細長くしたような形をしている。エントランスから中に入ると、住宅練のガラス張りの廊下が続き、そのデザインが実にかっこいいのだが、現在は別の学校として使われているため、撮影は残念ながら不可。やはり光がたっぷり差し込む食堂が隣接している。
ADGB連邦学校の外観
その奥に五つの住宅棟が続く。研修参加者が約1カ月滞在したというアパートも見せてもらった。2人部屋には手狭と感じたが、それでも当時のベルリンの住宅事情においてはかなり恵まれていたという。
一番奥の棟には体育館、2階には研修のための教室がある。面白かったのは、研修参加者の集中を促すために、外が見えないよう教室の窓がかなり上の方に設置されていること。周囲の自然も含めて魅力的な環境ゆえ、参加者を甘やかさないようにという工夫だろうか。
国際女性デーだったこの日、ガイドさんが、バウハウスで学び活躍した女性たちを紹介してくれた。その一人がアニ・アルバース(1899-1994)。ベルリン出身のユダヤ人の織物アーティストで、ここの講堂のために壁掛けを作り、後に米国に亡命した。
ベルリンからこんな近いところで、バウハウス建築を味わえる場所があるのは大きな発見だった。時間は少しかかるが、帰りはS バーンに乗った。ベルリンとベルナウを都市鉄道がつないだことで、都会と田園生活をバウハウスの理念で結びつける文化遺産が生まれたことに思いをはせながら。
全ドイツ労働組合総連合の連邦学校
ADGB-Bundesschule
1928年から30年にかけて、バウハウス建築によって建てられた。1933年にバウハウスが解散した後は、ナチスの機関へと変えられた。東独時代は労働組合の大学として使われていた。2017年、バウハウス関連遺産ではワイマールとデッサウに次いでユネスコ世界遺産に登録。建物内部は週末に行われるガイドツアーでのみ見学可能となっている。
ガイドツアー:土日11:30/14:30
住所:Hannes-Meyer-Campus 1, 16321 Bernau bei Berlin
URL:https://bernau.ticketfritz.de(チケット予約)
ベルナウ・ビジターセンター
Besucherzentrum Bernau
連邦学校と付随する教師の家の向かいにある情報センター。世界遺産の登録後に構想が具体化し、2022年2月にオープンした。常設展ではこの複合建築の歴史や、バウハウスで学んだ建築家や学生たちのことが紹介されている。ガイドツアーはここが集合場所となる。飲み物は買えるが、食事の提供はしていないので要注意。
オープン:火~日10:00-17:00(5~10月)/11:00-16:00(11~4月)
住所:Hans-Wittwer-Str. 1, 16321 Bernau bei Berlin
電話番号:03338-7067 879
URL:www.welterbe-bernau.de