レストラン「Kolk」の奥に広がるシュパンダウ最古の界
前回「キーツ」の原点を訪ねたので、もう少しベルリンの原初風景を求めて歩いてみたい。だが、現在のベルリンで中世の街並を見つけるのは極めて難しい。かろうじて、ベルリン最古のニコライ教会の周りに、メルヘンに登場するようなかわいらしい街並みが見られるが、これは東ドイツ時代にあくまで再現して造られたものである。そこで私はシュパンダウ(Spandau)に行ってみようと思い立った。独特の響きを持つこの街はベルリンよりもさらに起源が古く、1920年までは独立した街だった。
地下鉄U7のAltstadt Spandauで降り、大通りを横切って北に少し歩くと、お堀に架かる小さな橋がある。この橋を渡って、後ろを振り向いた時に見えるのがこの写真上の眺めだ。レストランのテラスの奥に6メートル近くはあろうかという城壁が建ち、その向こうには幅の狭い古めかしい建物が行儀よく並んでいるのが見える。実はここが、シュパンダウの中でも最古と言われる一帯「コーク」(Kolk)である。12世紀にスラブ人が定住したことに起源を持ち、今も残るこの城壁は14世紀前半のもの。
時の流れが止まったかのようなKolkの風景
さらに進むと、駐車場の向こうにまさにKolkという名の通りが続き、狭い路地にこぢんまりとした木骨の家屋がいくつか並んでいる。さすがに中世とまではいかないが、なにがしかの雰囲気は感じ取ることができる場所だ。アパートの窓枠を几帳面に磨いているおじいさんに話しかけてみた。「この建物は約250年前のもの。最近はさすがに傷んできて、中の木を取り替えなければならないんだよ」。Kolkの向こうには聖マリーエン教会が建っている。ベルリンで2番目に古いカトリック教会であり、華麗な内装は一見の価値がある。
シュパンダウはクリスマスマーケットで
名高い。毎年11月末から旧市街全体が
真冬のメルヘンという雰囲気に
地図を見ると、シュパンダウはハーフェル川とシュプレー川というベルリンの2大河川が合流する地点に生まれ、発展してきた街だということがよくわかる。それゆえ、1197年にSpandowの名で文書に初めて登場して以来、ここは軍事戦略上重要な意味を持つ街だった。
中でも名高いのは、ルネッサンス様式の星形要塞ツィタデレ(Zitadelle)だが、ここの紹介は別の機会に譲るとして、Kolkから旧市街を南へと歩いてみよう。第2次世界大戦で爆撃を受けたので、戦後の建物と背の低い歴史的建造物が奇妙に隣り合わせになっていたりする。それでも、600年以上の歴史を持つゴシック様式の聖ニコライ教会とマルクト広場を軸に、旧市街の核の部分はかなり残されていると言っていいだろう。ぶらぶら歩いていると、ベルリンがヨーロッパの一辺境都市だった時代のスケールは、このくらいだったのではと思わせてくれる。
あまりに巨大になったベルリンに少し疲れたら、中央駅からSバーンに乗って25分ほどのシュパンダウを訪れてはどうだろう。とにかく、「違う街に来た」という感覚を持てることだけは請け合いだ。
ゴシック・ハウス
Das Gotische Haus
シュパンダウの旧市街を訪れたら、ぜひ立ち寄ってみたい場所。ベルリン最古の建造物の1つで、ファサードの前に立つと、15世紀後半に建てられた一番古い部分とそれ以降に拡張された部分との違いが目で見てわかるようになっている。内部は観光案内所と郷土博物館になっており、親切なスタッフが対応してくれる。
開館:月~土 10:00~18:00
住所:Breite Str. 32, 13597 Berlin-Spandau
電話番号:(030)333 93 88
www.partner-fuer-spandau.de
コンディトライ・フェスター
Konditorei Fester
散策に疲れたら、マルクト広場に面したこのお店で休憩するのはいかが。1926年創業のコンディトライで、約70種ものケーキやトルテに目を奪われる。内部はカフェにもなっているので、ゆったりくつろげる。客の年齢層はやや高めで、シュパンダウの貴婦人が落ち合う場所といった雰囲気。
開館:月~日 8:00~18:00
住所:Markt 4, 13587 Berlin-Spandau
電話番号:(030)333 58 72
www.konditorei-fester.de