自然公園内に保存されている1940年製の蒸 気機関車
新緑が美しく映えるようになった季節、今回はちょっとユニークな公園をご紹介してみたい。
ベルリンの南側のターミナル駅、ズュートクロイツ駅からSバーンで南に一駅、森に囲まれたプリースターヴェーク駅を降りると、てっぺんの赤錆びた昔の給水塔が目の前に立ちそびえる。地図を見ると、ズュートクロイツ駅を頂点に、Sバーンと長距離列車、それぞれが走る2本の線路に挟まれた細長の三角形状の敷地があるのがわかる。遠くからも目立つ給水塔だが、ここがシェーネベルク南地域自然公園という大きな公園になっていることは、最近まで知らなかった。
元々この敷地は鉄道の操車場だった。1952年、長年ベルリンの主要ターミナルだったアンハルター駅が廃止になると、その南側に位置する操車場も使命を終え、広大な土地は少しずつ自然に戻っていった。70年代後半に新しい貨物駅の建設計画が持ち上がると、環境運動に熱心な市民が猛反発し、開墾を食い止めた。多くの市民の努力の甲斐あって、やがて市から風景・自然保護地域に指定さ れ、1999年に公園としてオープン。 2000年のハノーファー万博の公式プロジェクトに選ばれたことか ら、ベルリン以外でも知られる存在になったという。
入り口で1ユーロの入場料を払って中に入る。天気のいい日曜日だけに家族連れが多かった。給水塔の下には蒸気機関車の大きな車庫が今も構えている。近くに戦前の蒸気機関車も保存されており、わくわくした気分になってきた。この日は中に入れなかったが、車庫の中では前衛アートの展示やダンスのパフォーマンスが行われることもあるという。よく見ると、周囲にはさまざまなオブジェが飾られている。この自然公園は芸術や文化、教育との結び付きも大事にしているそうだ。
ここから北側に向かって歩いてみた。鉄道の操車場跡というと、だだっ広い空間を想像されるかも しれないが、意外にもこの自然公園にそういう場所はない。木がど こまでも生い茂り、細い遊歩道に 沿ってのみ歩けるようになってい る。ベルリンのほかの多くの公園と違って、ここでは犬や自転車の持ち込みもバーベキューも禁止。「そのような余暇の楽しみは、隣 接するHans-Baluschek公園でどうぞ」とHPにも書かれていたほどだ。ここはあくまで、貴重な植物や野鳥も生息する自然保護地域なのである。
一直線の遊歩道が続くシェーネベルク自然公園
だが、この遊歩道に沿って歩くのは楽しかった。突然前にトンネルが現れたり、手作りの展望台があったり、ユニークなベンチやオブジェが置かれていたり、遊びが利いているのだ。遊歩道の下には、今もかなりの数の線路がそのままの状態で敷かれている。周囲の風景は自然に還りつつあり、枕木には苔が生えているが、産業化の象徴でもある鉄道の線路との調和 が、奇妙な美しさを醸し出してい た。
緑のシャワーを存分に浴びな がら、自然と産業遺産、アートとの融合を楽しむ公園、と言えるだろうか。そのために最適な季節が やって来た。
シェーネベルク南地域自然公園
Natur-Park Schöneberger Südgelände
シェーネベルク南側に位置する18ヘクタールの自然公園。入場料は1ユーロ(14歳未満は無料)。敷地内には多くの線路のほか、今も機能するターンテーブルなども保存されている。マルツァーンの世界庭園やブリッツ庭園と同じく、グリーン・ベルリン有限会社が管理しており、3つの公園に共通の年間パス(20ユーロ)もお得。
住所:Prellerweg 47-49, 12157 Berlin
電話番号:(030)700 906 24
開館:毎日9:00~日没まで
URL:www.suedgelaende.de
カフェ・パレズュート
Café Paresüd
自然公園内にあるカフェ(Sバーンのプリースターヴェーク駅からすぐ近く)。土日のみの営業だが、緑に囲まれた中で、ブランチ(日祝の11:00~14:00)や種々のケーキなどを楽しむことができる。小さな子連れにもやさしい。150人まで収容可能な建物は、結婚式や各イベント会場としてもレンタルしているとのこと。
住所:Prellerweg 47-49, 12157 Berlin
電話番号:0173 208 30 23
開館:4~10月の土日祝11:00~18:00
URL:www.paresued.de