ジャパンダイジェスト

子育てから見るベルリンの多様性

時間が経つのは早いもので、今年から娘が保育園の年長組に入りました。私の家庭では送り迎えはパートナーと大体半々で行っていて、お互いが自由時間を取れるよう常にコミュニケーションを取って生活しています。これはベルリンでは珍しいことではないようで、保育園の送り迎えはもちろん、街中でベビーカーを押しているお父さんたちも多く見かけます。

公園の柵が地域の案内板に公園の柵が地域の案内板に

ベルリンの都市ガイドラインの中には、「家族に優しい都市」という方針が掲げられており、家族の暮らしに寄り添った都市構想も重要視されています。その中で最も象徴的なのは、保育所の無料化です。2018年8月から世帯の収入にかかわらず、ベルリンの全ての保育所が無料で利用できるようになりました。これは、金銭的負担そのものの軽減だけでなく、それによって仕事や可能性の選択の自由度を高めることで、親たちのワークライフバランスの向上につながっています。バイリンガルの保育所も一般的になりつつあり、さまざまな言語での保育が行われています。

冒頭でも触れた通り、娘の通う保育施設では、両親が送り迎えの役割をうまく分担している家庭も多く見受けられます。保育園の友人は子育ての負担をそれぞれ軽減するために、両親ともに働く時間を減らしていて、企業側も父親が育児休暇を取りやすい環境づくりをしていると聞きました。自分が経験してきた日本の保育環境と比較すると、男女平等な役割分担の意識が進んでいると感じます。また、市にはLGBTQ ファミリーのためのセンターも存在し、多様な家族の在り方を尊重する取り組みが進んでいます。

S バーンをモチーフにした遊具も!S バーンをモチーフにした遊具も!

さらに家族向けのイベントも豊富に用意されています。例えば、持続可能な農業のあり方を取り扱った子ども向けのフェスティバルでは、都市で育つ子どもたちが見えなくなりがちな、ものが生産される過程を実際に目で見て体験することができます。また特に「Kinderdisco」はベルリンらしさ溢れるイベントではないでしょうか。日中にクラブを子ども向けに開放して、音楽やダンスを大人さながらに楽しめるというものでしたが、クラブ文化に幼いころから触れられるのはテクノの街ならではの特権です。

そして何と言っても個性が光るベルリンの公園たち。うちの近所にあるドラゴン公園は特に娘のお気に入り。公園中央の木造のドラゴンに登ることができ、高さ5メートルほどの滑り台は大人でも迫力満点です。オリジナル感あふれる遊具がアートの街ベルリンで子どもたちの遊び心をくすぐっています。

ベルリンでの子育て生活を通じて感じるのは、家族全員が社会に参加し、多様な文化や価値観を受け入れる姿勢が自然に育まれている点です。親の働き方や、子どもたちのための文化プログラムなど、さまざまな選択の自由がもたらす影響は、子育てだけにとどまらず、人生そのものを豊かにしてくれています。

 
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中村さん中村真人(なかむらまさと) 神奈川県横須賀市出身。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。現在はフリーのライター。著書に『ベルリンガイドブック』(学研プラス)など。
ブログ「ベルリン中央駅」 http://berlinhbf.com
守屋健(もりやたけし)
ドイツの自動車、ビール、そして音楽に魅せられて、2017年に渡独。現在はベルリンに居を構えるライター。健康維持のために始めたノルディックウォーキングは、今ではすっかりメインの趣味に昇格し、日々森を歩き回っている。
守屋 亜衣(もりや あい)
2010年頃からドイツ各地でアーティスト活動を開始し、2017年にベルリンへ移住。ファインアート、グラフィックデザイン、陶磁器の金継ぎなど、領域を横断しながら表現を続けている。古いぬいぐるみが大好き。
www.aimoliya.com
佐藤 駿(さとう しゅん)
ドイツの大学へ進学を夢見て移住した、ベルリン在住のアラサー。サッカーとビールが好きな一児のパパです。地元岩手県奥州市を盛り上げるために活動中。
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