ジャパンダイジェスト

よみがえる黄金の20年代 ロマーニッシェス・カフェの展覧会

今から100年前、「黄金の20年代」といわれたベルリンで伝説的なカフェがありました。その名は、ロマーニッシェス・カフェ。現在タウエンツィエン通りのヨーロッパセンター内で、このカフェをテーマにした展覧会が開催されており、大きな反響を呼んでいます。

ロマーニッシェス・カフェは20世紀初頭、まさに今のヨーロッパセンターの位置にオープンしました。向かいのカイザー・ヴィルヘルム記念教会と同じく、フランツ・シュヴェヒテン設計によるネオロマネスク様式の建物内にあったため、こう名付けられました。

伝説的なカフェの雰囲気を伝えるロマーニッシェス・カフェの展示より伝説的なカフェの雰囲気を伝えるロマーニッシェス・カフェの展示より

当展覧会の発案者で、プロジェクトリーダーのカーチャ・バウマイスター=フレンツェルさんは、「なぜこの展示を行おうと思ったのか。それは戦争によって周辺も含め完全に消えてしまった空間だからです」と語ります。かつてクーダム周辺は、「ノイエ・ヴェステン」と呼ばれるベルリン西地区の新興住宅街でした。1920年の「大ベルリン」成立により、それまで独立した街だったこのエリアがベルリン市に組み込まれると、文化や流行の先端として名をはせるようになります。展覧会では、当時その周囲に構えていた映画館「ウーファ」や「カピトール」、カバレット劇場「天国と地獄」などが地図と写真で紹介され、想像力がかき立てられます。

カーチャ・バウマイスター=フレンツェルさん(左)とミヒャエル・ビーネルトさんカーチャ・バウマイスター=フレンツェルさん(左)とミヒャエル・ビーネルトさん

そんな街並みに面したこのカフェは、ゆったりしたテラスと高い天井を持つぜいたくな作りの空間でした。新聞の取りそろえが充実し、余計な音楽はなし、というシンプルさにより、多くの文化人に愛されました。例えば、エーリヒ・ケストナー、ベルトルト・ブレヒト、マックス・リーバーマン、アルノルト・シェーンベルク……。

そんなそうそうたるエリートのみならず、誰をも受け入れるおおらかさがありました。お金のない人は一杯のコーヒーとグラスに乗せられた二つのゆで卵(当時のメニューを再現した写真も展示)で粘ることができ、チェスを楽しむのも、原稿を書くのも、仕事や人生のパートナーを見つけるも良し。今でいうコワーキングスペースの機能も併せ持っていました。最新技術を使ったVRによる映像で、当時の内部の様子を覗き見ることもできます。

ナチス台頭により、常連客だったユダヤ人の多くは国外へ脱出し、自由を謳歌したこのカフェは終焉を迎えます。キュレーターのミヒャエル・ビーネルトさんは、「一つの時代を語れるカフェであり、その精神を今こそ伝えたい」と話しました。入場無料。展示は1月31日(金)までとなっていますが、延長される可能性もあるとのことです。

Romanisches Café:www.romanisches-cafe.berlin

 
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中村さん中村真人(なかむらまさと) 神奈川県横須賀市出身。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。現在はフリーのライター。著書に『ベルリンガイドブック』(学研プラス)など。
ブログ「ベルリン中央駅」 http://berlinhbf.com
守屋健(もりやたけし)
ドイツの自動車、ビール、そして音楽に魅せられて、2017年に渡独。現在はベルリンに居を構えるライター。健康維持のために始めたノルディックウォーキングは、今ではすっかりメインの趣味に昇格し、日々森を歩き回っている。
守屋 亜衣(もりや あい)
2010年頃からドイツ各地でアーティスト活動を開始し、2017年にベルリンへ移住。ファインアート、グラフィックデザイン、陶磁器の金継ぎなど、領域を横断しながら表現を続けている。古いぬいぐるみが大好き。
www.aimoliya.com
佐藤 駿(さとう しゅん)
ドイツの大学へ進学を夢見て移住した、ベルリン在住のアラサー。サッカーとビールが好きな一児のパパです。地元岩手県奥州市を盛り上げるために活動中。
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