クロイツベルク地区にユニークなコンセプトの下で運営しているレストランがあると聞き、先日お昼時に訪ねてみました。ラントヴェーア運河の岸辺から一歩入ったグレーフェ通りを行くと、リンゴのマークの看板が見えてきました。店の名は「世界の料理」を意味する「Weltküche(ヴェルトキュッヘ)」。
パステルカラーの内装は温かさと心地良さを感じさせ、セルフサービスのレジからは女性の店員さんの元気な声が響き渡ります。ランチ・メニューは日替わりの3種類で、私はナスに挽肉を詰めてオーブンで焼いたオリエント風の料理を頼んでみました。薄味のトマトソースと肉の香ばしさがマッチしていて、とても美味しかったです。値段は4.50ユーロ。全体的に物価が安めの同地区にあっても、さらにワンランク下の価格設定といえるでしょう。
実は、ここで働く約10人のスタッフの中に、ドイツ人は1人もいません。例えばこの日は、トルコ人のウェイトレスにエジプト人のコック、料理を運ぶウェイターはトルクメニスタンから移住して来たという青年……という具合。ヴェルトキュッヘは、ベルリン在住の無職の移民に職業訓練と働く場を提供しようという社会プロジェクトから生まれたレストランなのです。
パステルカラーの内装がかわいらしい
「ヴェルトキュッヘ」の店内
ヴェルトキュッヘがグレーフェ・ヴィルトシャフトというNPO団体によって運営されるようになったのは、2009年のこと。当時からアドバイザー役を務めているアネッテ・ヤンコフスキさんに話をうかがいました。「もともと私はドイチェ・バーンに勤務していましたが、ヴェルトキュッヘのアイデアに感銘を受け、力になりたいと思ったんです。ここで働く人の中には、政治状況が困難な国の出身ゆえ、ドイツの滞在許可に問題を抱えている人も多く、州やEUレベルのネットワークとも提携しながら彼らを援助しています」。ランチ、夜のビュッフェ共に、地元の人に好評で、ケータリングサービスも行っているそうです。
コックとして働くアブデル・ツァーヘアさんは、18年前にエジプトからベルリンに移住して以来、飲食業を点々としていたそうですが、「ここでは、その日のメニューを自分で決められるんだ。トルコ系、オリエント系、もちろん私の出身地エジプトの料理もね。毎日がとても楽しいよ」と嬉しそうに語ってくれました。
これらの活動と理念が評価され、ヴェルトキュッヘは昨年、連邦政府が主宰する「ドイツ―アイデアの国」コンテストで受賞しています。営業時間は、月〜金 12:00〜22:00(冬期は12:00~16:00)。
http://die-weltkueche.org
厨房で働くツァーヘアさん(左)と
トルコ出身のコザックさん