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空襲体験者との対話から平和を学ぶ子どもたち

戦争とはどんなものだったのか……戦争を知らない世代の日本の子どもたちが、海外で平和学習に取り組んでいます。9月、チェコの首都プラハで日本人学校に通う小学6年生15人が平和と戦争についてドレスデンで学びました。

子どもたちはまず軍事歴史博物館で戦争や軍事の歴史に触れ、とりわけ第二次世界大戦について学びました。どのようなことが起き、彼らと同じ一般の人々にどんな影響を与えたのか、想像力をめいっぱい広げて理解しようとしていました。

子どもたちが特に関心を示した展示は、インゴ・ギュンター作のインスタレーション作品でした。まぶしい閃光によって数秒間、人の影が壁に焼きつけられるものです。彼らはすぐにこの作品が広島、長崎の町を襲った原爆を題材としていることに気がつきました。作品中で影が焼きつけられることで、1945年の広島、長崎で一瞬にして体が焼かれたということを疑似的に体験します。起こった出来事を自分たちの体で捉えて、考えることにつながりました。また当時の最新技術や身近な動物、遊具も戦争に利用されていた例を示す展示に触れ、戦争までの流れがどういうものだったかを学びました。

展示を前に熱心に話を聞く子どもたち
展示を前に熱心に話を聞く子どもたち

この修学旅行で子どもたちはある特別な人と対面します。1945年ドレスデン空襲の体験者であり、現在語り部として活動をしているノラ・ラングさんです。戦時下の自身や町の写真を見せながらの体験談に、子どもたちはじっと耳を澄ませます。ラングさんは彼らと異なる世代ですが、空襲の頃彼女はちょうど彼らと同じ年齢でした。家族がいて、お祭りを楽しみにしていたという、自分たちと変わらない年齢の子の日常が壊されたという事実に、子どもたちは今の自分の状況を照らし合わせずにはいられなかったでしょう。体験談を聞いた後には子どもたちからラングさんにたくさんの質問が出ました。当時の周りの状況や家族のその後を詳しく聞き、子どもの頃にラングさんがどのように感じたのか、今何を望むのか、自分たちにできることは何か、子どもたちは疑問や考えを彼女に率直に伝えました。ラングさんの一番の思いは、人を憎むことからは何も生まれないこと、そして困っている人に寄り添い、助ける方法を考えることでした。

空襲体験者へ次々に出る質問
空襲体験者へ次々に出る質問

戦後73年が経ち、戦争の体験者と対話できる機会はますます減っています。今後どのように戦争を知り、平和を理解していくか考える必要があります。自分で見聞きし考えようとする子どもたちの姿勢に、新しい時代へと歴史をつないでいく意志を感じました。

勝又 友子
東京都出身。ドイツ、西洋美術への関心と現在も続く職人の放浪修行(Walz ヴァルツ)に衝撃を受け、2009年に渡独。ドレスデン工科大学美術史科在籍。
 
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