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ヒロシマ・ナガサキ原爆展 と竹田信平氏の「β崩壊」

ドレスデンのミッテ駅近くにはかつて発電所だった巨大なレンガ造りの建物の一群があります。この19 世紀の産業遺構は4万平方メートルもの敷地を有し、2016年末をめどに順次修復され、文化、芸術、クリエイティブな活動のための発信基地として新たに生まれ変わる予定です。その中のかつて熱交換所だったクンストハレ(Kunsthalle)にて『記憶の水平線 ドレスデン・広島・長崎(Erinnerungshorizonte Dresden Hiroshima Nagasaki)』展がスタートしました(会期は10月30日まで)。この展覧会は国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館で2005年から毎年開催されている『ヒロシマ・ナガサキ原爆展(海外原爆展)』と、メキシコとドイツを拠点に活動する作家の竹田信平氏による作品で構成されています。

館内に入ると、まず筒のような縦長の3層の巨大な吹き抜けと、その天井からつり下げられた竹田氏の作品「β崩壊」に目を奪われます。メキシコ先住民の伝統的な織物に使用される細く柔らかい綿糸をより合わせた作品は、荒々しく無機質なコンクリート架構と素材的に大きなコントラストをみせています。見方を変えると、建物に刻まれている時間の集積と過去の記憶が、作品の無数の糸が表現する時間や記憶と呼応しています。視覚的には対立をみせ、内的には共通言語でつながっていると感じました。

竹田信平
圧巻の巨大空間と竹田氏の作品

そして次ぎの空間には2016年度海外原爆展のパネルが展示されています。この展示資料には原子爆弾の悲惨さを世界に知らせる目的があるため、大きな衝撃を受ける写真もあります。

9月21日の夕方に開催されたオープニングでは、ドレスデンのヒルバート市長の日本語を交えた挨拶に始まり、在ドイツ日本国大使館の岩間公使、国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館の智多館長のスピーチが続きました。最後に被爆者である山田一美氏(82歳)が壇上に立つと、想像を絶する経験を背負っているにもかかわらず穏やかな笑みをたたえた山田さんに、来場者の寄せる思いが一つになったような感覚を覚えました。

記憶の水平線展
オープニングにて、ヒルバート市長に見守られて記帳する山田さん

来場者全員へ広島と長崎に原爆が投下された時間を針が差した2個の時計型のマグネットが配布されたほか、長崎のカステラが振る舞われるなど、お土産大国日本らしいこまやかな心遣いがみられました。核兵器の悲惨さと廃絶に向けた地道で粘り強い活動には心を打たれるものがあり、多くの方に訪れてもらいたいです。ドレスデンの後にはデュッセルドルフでも被爆体験講話が開催されました。

『記憶の水平線 ドレスデン・広島・長崎』: www.antimonument.de

竹田信平氏: www.shinpeitakeda.com

福田陽子さん福田陽子
横浜出身。2005年からドレスデン在住。ドイツ人建築家の夫と娘と4人暮らしの建築ジャーナリスト。好奇心が向くままブログ「monster studio」公開中。
http://yoyodiary.blog.shinobi.jp/
 
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