先日、ユネスコ世界遺産にドイツのシュヴェーリン城が認定されたことがニュースになっていましたね。では、ドイツで最初に世界遺産に登録されたのはどこか知っていますか?それはノルトライン=ヴェストファーレン州アーヘンにある「アーヘン大聖堂」です。1978年のユネスコ総会では全世界から選ばれた12件が最初の世界遺産として登録され、そのうちの一つでした。今回は、そんなアーヘン大聖堂の魅力をご紹介したいと思います。
ステンドグラスが美しいガラスの礼拝堂
まず、アーヘンという地名は、古いドイツ語で「泉」や「水」を意味します。古代ローマ時代から温泉保養地として発展したこの地は、フランク王国の時代にカール大帝が気に入り、事実上の拠点としました。そして王宮付属の礼拝堂として、786年に建て始めたのがアーヘン大聖堂です。その後、増改築を経て現在の姿になりました。10世紀からの約600年間は、歴代30人の神聖ローマ皇帝の戴冠式がここで行われたこともあり、別名「Kaiserdom」(皇帝の大聖堂)と呼ばれています。
八角形が特徴的なドームの天井
旧市街の中にある大聖堂は、周囲を建物に囲まれていて一見目立たないものの、扉をくぐって中に入ると豪華絢爛な世界が広がります。金の装飾をふんだんに使ったきらびやかなモザイクが天井や柱に広がり、教会というよりは宮殿のような雰囲気。大聖堂の中心のドームは、八角形の特徴的な形をしていて、中央からはシャンデリアがつるされています。これは、キリスト教の世界では「8」という数字が「復活」を意味し、神聖な数だったことに由来するのだそうです。
中心の高さは約32メートル、2階の周歩廊に上がると、より近くから天井のフレスコ画を眺めることができます。奥には高さ約25メートル、総面積約1000平米のステンドグラスに囲まれた礼拝堂があり、外から差し込む光が美しく「ガラスの礼拝堂」と呼ばれています。隣接する宝物館では、カール大帝の金の胸像や宝石が散りばめられた十字架などが展示されていて、その歴史をより深く知ることができます。
クリスマス時期のプリンテン
さて、アーヘン名物といえば、「アーヘナープリンテン」(Aachener Printen)と呼ばれる香辛料をたっぷり使ったクッキーのような焼き菓子。クリスマスの定番レープクーヘンの原型ともいわれます。オリジナルのものからドライフルーツやナッツ入り、チョコレートでコーティングされたものなど、種類も豊富。大聖堂の向かいにあるパン屋「ノービス」(Nobis)は、1858年創業の老舗。お土産にプリンテンを買うのはもちろん、観光途中のティータイムにもおすすめですよ。
現在、ドイツにある世界遺産は53カ所(2024年8月現在)。教会や宮殿をはじめ、歴史的な街並みや製鉄所、炭鉱跡地など、幅広いジャンルのものが登録されています。意外と近所にあるのに、まだ行っていないところがあるかもしれませんよ。
出版社勤務ののち、夫の駐在に伴い2019年7月に渡独。現在は、デュッセルドルフ生まれの3歳と0歳の娘の子育てに奮闘中。趣味はライン川での散歩と、パンやお菓子を焼くこと。