そもそも景観防止条例で規制されているがゆえに高層ビルの少ないドイツで、もちろんデュッセルドルフもその例外ではありません。その中でも一きわ高くそびえるビルが鉄鋼会社ティッセン・クルップ本社の入る「ティッセンハウス」(通称:三層ハウス)です。街の中心部に行けば、遠くからでも輪を3つ重ねた上に傘をかぶったような会社のマークと板チョコを重ねたような薄い3層の建物が見え、デュッセルドルフのランドマークとなっています。
3層が分かるのは正面から
ところがこのティッセン・クルップ社がこのほど、来年にエッセンに本社機能を移転すると発表しました。元々、合併する前のティッセン社、クルップ社ともに会社のルーツはルール工業地帯にあり、その地域と密接な関係を保つとともに原点に戻るというのが理由だそうです。それに伴い、移転費用を捻出するため、名物のティッセンハウスも売却されることになりました。
この建物はコンペでデュッセルドルフの大手建築家事務所HPPが1955年当時、ティッセン社の発注を受けて設計し、3年かけて作られたものです。HPPは今や世界的に有名になり、彼らの初期の作品としてティッセンハウスも長い間、ドイツの名建築の1つに数えられてきました。
お隣の劇場もHPPの作品
機能性よりもデザイン性を重視した、その一風変わった形状はいうまでもなく、特筆すべきは施主であるティッセン社がビルの重さを支えるために必要な鉄柱を自ら生産、調達したという点でしょうか。
ティッセンハウスには米投資会社が買収に関心を寄せていると報じられています。もちろん所有者が変われど、デュッセルドルフのシンボルであり続けるでしょうが、あの目に慣れ親しんだマークがなくなれば、何か違う存在になってしまうような気がするのは私だけでしょうか。
デュッセルドルフのランドマーク、ティッセンハウス
大のあんこ好き。馬力と集中力が切れてくる午後 3時のおやつはなんたってあん ぱん。近所の日本パン屋へ調達に走る時ぞ、「デュッセルドルフに住んでいて良かった」と思う瞬間です。